禁葷食(きんくんしょく)


禁葷食(きんくんしょく)は、仏教の思想に基づく菜食の一種をいう。


精進料理では避けるべきと考えられている食材が大きく分けて2つあり、1つは動物性の食材、もう1つは五葷(ごくん)と呼ばれるネギ属などに分類される野菜である。



五葷(ごぐん)の扱いは時代や地域によって異なる。



大乗仏教道教においては、殺生を禁ずる目的から、動物性の食品(三厭(さんえん)、すなわち獣・魚・鳥)を食べることを禁じられた他、「葷」(くん)と呼ばれる臭いの強い野菜類を食べることもさけられた。



多くの場合、主にネギ属の植物であるネギラッキョウニンニクたまねぎニラなどを避けるのが特徴である。ネギ科ネギ属の植物は、硫化アリルを成分として多く持っており、これが臭いの元となっている。『説文解字(せつもんかいじ)は「葷」を「臭菜也。从艸軍聲」(臭い野菜。部首は草冠で音は軍)と説明している通り、本来はネギ属の植物を指していたが、なまぐさ訓読みするように、現在の中国語では主に「素」(そ)の対義語として、動物性の食品を指すように意味が変化している。



禅宗などの寺院に行くと、「不許葷酒入山門」あるいは「不許葷肉入山門」などと刻んだ石碑が建っていることが多い。これは「葷酒(葷肉)の山門に入るを許さず」と読み、肉や生臭い野菜を食べたりを飲んだものは、修行の場に相応しくないので立ち入りを禁ずるという意味である。