日本の精進料理 現状


寺院仏閣の中には、参拝者を宿坊(しゅくぼう)に泊め、精進料理を提供して仏門の修行の一端を体験させることをしているところも少なくない。参詣参篭(さんろう)信仰の重要な一部となる天台宗真言宗系の寺院に多い。



また、宿坊においては、料理と宿泊だけの提供もある。長野県の善光寺には、参拝客を宿泊させる宿坊が数多く存在し、夕食に精進料理を供することが多い。出される精進料理は、本膳式の本格的なものから、懐石料理風の現代的なタイプのものまでさまざまである。



一方、京都の寺院では、特に賓客用の精進料理を料理屋に一任したことが多かったため、寺院よりも周辺の料理屋に高度な精進料理が存在することが多い。大徳寺妙心寺の周辺には精進料理専門の老舗の料理屋がある。



これは普茶料理でも同様であり、黄檗宗の総本山である萬福寺周辺には、普茶料理を食べさせる料理屋が多い。普茶料理には、料理屋で作られる独自のスタイルを止めて懐石料理風に仕立てた限りなく日本料理に近いタイプのものから、長崎の禅寺で作られる原点に近く、時としては現代の素菜を取り入れた中国料理に限りなく近いもの(長崎の禅寺の檀家には華僑が多く、お盆などでは中国や台湾からの来訪者も多いためとも考えられる)まで幅広く存在する。