寺請制度 寺請証文


寺院は檀家に対して自己の檀家であることを証明するために寺請証文を発行した。寺請状(てらうけじょう)、宗旨手形(しゅうしてがた)とも呼ばれる。



寺請制度では、毎年1回の調査・申告によって宗門人別改帳が作成された。これに基づいて寺請証文が発行され、人々が奉公や結婚その他の理由で他の土地に移る場合には、移動するものの年齢・性別・所属・宗旨などを記載して村役人送一札(おくりいっさつ)とともに移転先にある新たな檀家寺に送付して移転の手続とした。移動元から移動先に送る証文を宗旨送・寺送状と呼び、本人確認後の証明として移転先から移転元に送る証文を引取一札(ひきとりいっさつ)と呼んだ。


ただし、檀徒が信徒としての責務を果たせないと寺から判断された、あるいは散(ちょうさん)ないし逃亡し消息不明となった場合は、寺は寺請証文の発行を拒否することができた。事実上の檀徒除名であり、後日、宗門人別改帳からも削除されて無宿(むしゅく)非人(ひにん)となり、社会生活から除外された。