中論 後世への影響
インド・チベット
龍樹のこの著作から、中観派(ちゅうがんは)と呼ばれる、大乗仏教の一大学派が始まった。
この中観派に属するシャーンタラクシタ(寂護。じゃくご)、カマラシーラ(蓮華戒。れんげかい)、アティーシャなどのインド僧は、チベット仏教の歴史に多大な影響を与えており、特にアティーシャの影響下から、ツォンカパが出ることによって、中観帰謬論証派(プラーサンギカ派)思想と後期密教を結合した、顕密総合仏教としてのチベット仏教の性格が決定付けられることになる。
中国・日本
また一方では、この『中論』と、同じく龍樹の著作である『十二門論』(じゅうにもんろん)、そして弟子である提婆(だいば)の『百論』(ひゃくろん)が中国に伝わり、「三論宗」が形成された。これは日本にも伝わり、南都六宗の一派になった。
更に、天台宗の始祖である慧文(えもん)禅師も、この『中論』に大きな影響を受け、その内容を中諦・三諦といった概念で独自に継承した。