大乗の涅槃経 作成意図


上記のように、涅槃経はそれまでの大乗経典を参照として、それらの教説の食い違いや矛盾をこの涅槃経をもって帰結させるという目標のもと成立した経典といえる。



仏滅後の小乗と大乗(声聞・縁覚・菩薩の三乗)の差別的な概念が成立した流れを踏まえ、法華では一乗平等を目標とし示したが、いまだ論理的な説明が成しえなかった。涅槃経は法華経で説明されなかったそれらの教説を極めて明瞭に説明し、すべての教説を融和させようとしたものである。


また法華経での強い正法護持の精神を引きつぎ、その激しい一面ものぞかせている。たとえば、過去世に釈迦仏が仙預王であった時、1人のバラモンが大乗正法を悪口誹謗するのを聞いて、バラモンを即座に刀剣で命を断ったと説かれる。

いずれにしても、涅槃経は釈尊滅後の教団分裂に始まる対立や矛盾をいかに大乗仏教の立場から円満に解消し、すべての救いを完結ならしめんとする究極の目標をもって書かれた経典として作成されている。