大乗の涅槃経 法華経との関係①


涅槃経は他の経典との関連性を随所に説いているが、涅槃経は特に法華経と密接な関係があり大乗の思想発展や経典成立の過程を見る上で注目に値する。たとえば如来常住は、すでに金光明経の如来寿量品で「仏は般涅槃せず、正法また滅せず、衆生を利せんが為の故に当に滅尽する事を示現す」とある。また法華経の如来寿量品には、釈迦仏釈迦族の王位を捨てて出家し修行して菩提樹の下で初めて悟りを得たのではなく、過去の無量無辺の時空間においてすでに成仏していたことを打ちあけ、「しかも実には滅度せず、常に此処に住して法を説く」とある。これは如来の常住思想を端的に表したものである。とはいえ金光明経はもとより法華経では未来における釈迦仏の常住については涅槃経ほど詳細に述べられていない。これに対し涅槃経では、金光明経や法華経で説かれた未来における釈迦仏の常住説をさらに発展させ、詳細に述べている。したがって法華経などの経名が涅槃経文中にあることから、それよりも後世の創作であると考えられるが、それら既成経典をさらに敷衍し発展させたことが理解できる。



また涅槃経では、この常住思想を発展昇華し、釈迦仏滅後の未来世での仏や法、またそれを遵守する僧団は不壊であり永遠のものであるという思想をさらに展開して随所に説いている。いわば涅槃経は釈迦仏滅後の未来の救いを大きな柱として最後に編纂されたものと思われる。またこれは大乗仏教の思想を発展させたものであり、如来の常住思想は、方等経典に始まり法華経でさらに発展させたものを、涅槃経ではまたさらにこれを最終形として編纂されたことがわかる。



一乗思想についても、同じく大乗仏教の思想を発展させたものである。一乗とは一仏乗のことで、すべての衆生がひとしく仏如来となれる唯一の教法を指す。これは現在、一般的に法華経がその教えとされている。しかし涅槃経は法華経の一乗思想も受け継ぎ、さらに弁証法的、発展的な理論展開がなされている。