チャクラ
チャクラ(サンスクリット語: चक्र)は、サンスクリットで「車輪・円」を意味する語。漢訳は「輪」(りん)、チベット語では「コルロ」(khorlo)という。インド起源の神秘的身体論における、物質的な身体(粗大身)と精微な身体(微細身)にある複数の中枢を指す。
身体重視のヨーガであるハタ・ヨーガでは、技法だけでなく、身体エネルギーの活性化に関連して身体宇宙論とでもいうべき独自の身体観を発展させ、これに蓮華様円盤状のエネルギー中枢チャクラ、エネルギー循環路のナーディ(脈管)を想定した。これは『ハタプラディーピカー』などのハタ・ヨーガ文献だけでなく数々のヒンドゥー教タントラ文献にも見られ、仏教では後期密教文献の身体論と共通性がある。
この身体観は、現代のヨーガの参考図書では、主要3脈管と、身体内に6つ・頭頂に1のチャクラで構成されているとされることが多いが、この6輪プラス1輪というチャクラ説は、ジョン・ウッドロフ(筆名アーサー・アヴァロン Arthur Avalon)が著作『The Serpent Power』で英訳紹介した『六輪解説』(Satcakranirupana)に基づいており、この本は16世紀ベンガル地方で活動したシャークタ派のタントラ行者プールナーナンダにより1577年に著されたものである。アーサー・アヴァロンによる紹介以降、6輪プラス1輪のチャクラが定説のようにみられているが、実際は学派や流派によってさまざまな説が存在するといわれ、ほかに4輪説などもある。愛知文教大学の遠藤康は、『六輪解説』における身体観は脈管とチャクラに関する比較的詳細でよくまとまった解説であり、チャクラを含む伝統的な身体観を原典に遡って理解するうえで有益な文献であるが、あくまで特定の流派における論であり、唯一のものではないと指摘している。
欧米に紹介されたチャクラの概念は、近代神智学や西洋オカルティズムに導入され、オーラ(生体が発散するとされる霊的な放射体)は、チャクラから生ずるとも言われる。チャクラは霊的肉体にあり、通常の人間には見えないが、開花したチャクラは霊視により花弁状に見えるとされ、チャクラを開花させるとそれぞれのチャクラの性質に応じた能力が発揮できるようになると言われることもある。チャクラを実在すると考え、現実の肉体における内分泌腺などと霊的に直結し、それぞれの宇宙次元にも対応していると考える人もいる。欧米のヨーガ、レイキなどのエネルギー療法・手当て療法、阿含宗・オウム真理教・本山博(もとやま ひろし)の玉光神社などの日本の新宗教・新新宗教にも取り入れられている。