仏教 教義 因果論



仏教は、物事の成立には原因と結果があるという因果論(いんがろん)を基本的考え方にすえている。


生命の行為・行動(体、言葉、心でなす三つの行為)にはその結果である果報が生じるとする論があり、果報の内容如何により人の行為を善行と悪行に分け(善因善果・悪因悪果)、人々に悪行をなさずに善行を積むことを勧める。また個々の生に対しては業の積み重ねによる果報である次の生、すなわち輪廻転生(りんねてんしょう)を論じ、世間の生き方を脱して涅槃(ねはん)を証さない(悟りを開かない)限り、あらゆる生命は無限にこの輪廻を続けると言う。


輪廻・転生および解脱の思想はインド由来の宗教や哲学に普遍的にみられる要素だが、輪廻や解脱を因果論に基づいて再編したことが仏教の特徴である。

人の世は苦しみに満ち溢れている。そして、あらゆる物事は原因と結果から基づいているので、人々の苦しみにも原因が存在する。したがって、苦しみの原因を取り除けば人は苦しみから抜け出すことが出来る。これが仏教における解脱論である。

また、仏教においては、輪廻の主体となる永遠不滅の魂(アートマン)の存在は「(くう)の概念によって否定され、輪廻は生命の生存中にも起こるプロセスであると説明されることがある点でも、仏教以前の思想・哲学における輪廻概念とは大きく異なっている。


輪廻の主体を立てず、心を構成する認識機能が生前と別の場所に発生し、物理的距離に関係なく、この生前と転生後の意識が因果関係を保ち連続しているとし、この心の連続体(心相続,चित्त संतान citta-saṃtāna)によって、断滅でもなく、常住でもない中道の輪廻転生を説く。