摧邪輪 影響その他



本書に対しては、法然の門徒や門流からの反論も数種現れている。そのうち、了慧(りょうえ)の『扶選択正論通義』『新扶選択報恩集』はいずれも『浄土宗全書』第8巻に収載されている。また、藤場俊基(ふじば としき)によれば、親鸞の『教行信証(きょうぎょうしんしょう)は『摧邪輪』の法然批判に対して書かれたものであるという。



法然、親鸞道元など、いわゆる「鎌倉新仏教」と称される仏教刷新の潮流に対し、高弁もまた、立場は異なるとはいえ「仏陀の精神に帰れ」と主張する思想家であったと評価しうる。そしてまた、かかる思想家群の登場は、社会のあり方そのものが大きく様変わりすることを予兆する現象だったのであり、法然とは異なる立場の思想家もまた、法然が課題としたことや法然が解決したこととは無縁ではなかったのである。