渡辺綱と茨木童子の戦い 一条戻橋



茨木童子が出現するのは、堀川にかかる一条戻橋(いちじょうもどりばし)の上というパターン。若い美女が道に困っていたため、渡辺綱が馬に乗せてやると、女は突然鬼の姿になって綱の髪の毛を掴み、空中に飛び上がって愛宕山(あたごやま、あたごさん)に連れ去ろうとした。綱は慌てず名刀・髭切(ひげきり)で鬼の腕を切って難を逃れた。



綱は、切り取った鬼の腕を源頼光に見せた。頼光が陰陽師安部晴明だとする話もある)に相談したところ、「必ず鬼が腕を取り返しにやって来るから、七日の間家に閉じこもり物忌みをし、その間は誰も家の中に入れないように」と言われた。それから数日間、茨木童子はあらゆる手を用いて綱の屋敷へ侵入しようとするが、綱の唱える仁王経(にんのうきょう)や護符(ごふ、ごふう)の力で入ることができなかった。



ついに七日目の晩になって、摂津の国から綱の伯母・真柴(ましば。伯母ではなく養母が来るという話もある)が綱の屋敷にやってきた。綱は事情を話し決して伯母を屋敷に入れなかったが、年老いた伯母は「幼いころ大切に育てた報いがこの仕打ちか」と嘆き悲しんだので綱は仕方なく言いつけを破って伯母を屋敷に入れる。ところが、この伯母は実は茨木童子の化けた姿だった。伯母の姿のまま、綱が切り取ったと言う鬼の腕を見たいと言い、封印された唐櫃から出されてきた腕を手にとってじっくり見ていると、突然伯母は鬼の姿に戻った。そして腕を持ったまま飛び上がり、破風を破って空の彼方に消えたという。