鬼の語源



「おに」の語はおぬ(隠)が転じたもので、元来は姿の見えないもの、この世ならざるものであることを意味した。そこからの力を超えたものの意となり、後に、人に災いをもたらす伝説上のヒューマノイドイメージが定着した。さらに、陰陽思想浄土思想習合し、地獄における閻魔大王配下の獄卒であるとされた。



古くは、「おに」と読む以前に「もの」と読んでいた。平安時代末期には「おに」の読みにとって代わられた「もの」だが、奈良時代の『仏足石歌(ぶっそくせきか)では、「四つの蛇(へみ)、五つのモノ、~」とあり、用例が見られ、『源氏物語』帚木(ははきぎ。ほうきぎ)には、「モノにおそはるる心地して~」とある。これらの「モノ」は怨恨を持った霊=怨霊であり、邪悪な意味で用いられる(単なる死霊ではなく、祟る霊。)。 なお、「もの」は大野晋(おおの すすむ)によれば、タミル語由来であるという。

タミル語における「鬼」も多くは女性がなるものと捉えられた。大野晋は、これらのことから、中国の道教が伝わって広まる以前の弥生時代から南インドにおける鬼(モノ)を恐れる観念=御霊信仰が伝わり、由来となったと指摘している。