卍 日本
日本語の漢字表記では、「万字」または「卍字」「卍」と書く。訓読みは「まんじ」音読みは「まん」または「ばん」である。漢字の「万・萬」を代用する文字でもある。
日本では、奈良時代の薬師寺本尊である中尊の薬師如来の掌と足の裏に描かれたものが現存最古の例とされる。
卍を組み合わせた、紗綾形(さやがた)は安土桃山時代に明から輸入された織物に見られた文様で、染め物や陶磁器などに使用される。「卍崩し」「卍繋ぎ」「雷紋繋ぎ」ともいい、英語では key fret と呼ばれる。また、法隆寺など飛鳥時代から奈良時代の建築に見られる「卍崩しの組子」の組高欄は、卐を崩したものである。
家紋
卍紋・万字紋(まんじもん)は、仏教の吉祥を表す紋として用いられる。形状から日本のキリシタンが十字架の代わりともした。
卍紋を家紋として用いた氏族としては、戦国時代から江戸時代以降の大名では、大給松平(おぎゅうまつだいら)家、高木(たかぎ)氏は「左万字」、津軽(つがる)氏は「五つ割左万字」、蜂須賀(はちすか)氏は「丸に左万字」、江戸幕府家臣では、60 氏ほどが『寛政重修諸家譜』(かんせいちょうしゅうしょかふ)に掲載されている。幕末に活躍した吉田松陰の家紋は「五瓜に左万字」である。津軽氏の本拠であった青森県弘前市は卍紋を市章にしている。
地図記号
地図記号では「卍」と表記される。これは、卍の漢字を記号化したものが元になっている。
明治 13 年に決められた「佛閣」の記号として表記されたのが始まりである。
現在でも国土地理院が定めた地図記号として変わっていない。
文字コードには、最初電波産業会が定めた FM 文字放送の放送規格である ARIB STD-B3(FM 多重放送の運用上の標準規格)で ARIB外字の道路交通情報用の文字として、国土地理院地形図の表示形態と同一になる文字として導入された。この記号は正式にARIB STD-B24(デジタル放送におけるデータ放送符号化方式と伝送方式)で定められた文字と対応している。データ放送で使用されている文字を国際標準とするため Unicode に提案され、2010 年にUnicode 5.2 に ARIB 外字が対応するように定められ、U+0FD6 の「࿖」(LEFT-FACING SVASTI SIGN) がこの文字に対応するとされた。したがって、日本語のフォントの場合 U+0FD6 の文字は国土地理院の地図記号の形状にすることがよいとされる。