女天狗(おんなてんぐ、めてんぐ)
女天狗(おんなてんぐ、めてんぐ)は、天狗の一種で、その名の通り女性の天狗。
江戸時代の百科事典『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)巻44治鳥付天狗天魔雄の記述では、スサノオが吐き出した猛気から「天逆毎姫」(あまのさこのひめ)が生まれ、これが獣の首と人の体を持つ天狗神だとしている。僧の諦忍(たいにん)の著書『天狗名義考』でも『先代旧事本紀大成経』(せんだいくじほんぎたいせいきょう)から引用し、スサノオの息から「天狗神」(あまのざこがみ)が生まれたとある。これは鳥山石燕(とりやま せきえん)による妖怪画集『今昔画図続百鬼』(こんじゃくがずぞくひゃっき)にも「天逆毎」(あまのさこ)として描かれている。
また『源平盛衰記』(げんぺいせいすいき/げんぺいじょうすいき)によれば、驕慢な性格の尼法師が「尼天狗」になるとある。尼天狗の顔は天狗に似るが、もとが尼のために頭は剃髪しており、背に翼を持ち、法衣を身にまとっているという。
こうした女天狗は、男性の天狗と共に世俗に混じっているという。その際の姿は長い頭髪を持ち、黛(まゆずみ)や口紅で化粧し、歯には鉄漿(おはぐろ)をつけ、緋色の袴、小袖五ツ衣、薄絹を身に着けており、天狗どころか優美な女性にしか見えず、背の翼を見るまでは天狗とはわからなかったという。