天狗の魔縁(外道、外法)
本来、天狗は中国の彗星などのことであったが、日本に伝わると平安時代以降、名利をむさぼり慢心をもつ傲慢(ごうまん)で自我に捉われた修験僧(山伏)のこととされるようになり、そして、山の妖怪である天狗を指すようになった。
そのような修験僧は、死後に天狗道という魔界に転生すると考えられるようになった。
したがって、天狗道は仏教の六道(りくどう)の範疇にないことから、その六道の輪廻からも外れた魔界であるとされる。仏教の知識があるため人間道には戻れず、特に宗教上の罪を犯したわけではないため地獄道、餓鬼道、阿修羅道、畜生道には堕ちず、かといって信心には無縁であるため天道にも行けず、天狗道に堕ちるとされる。そのため、6つの道から外れて救済不能な道、あるいはその道の者を外道(げどう)と俗称する(しかし外道の本来の意味は、悟りを得る内道を説く仏教に対し、それ以外の六師(ろくし)などの教えを指していうのが通常の用法である)。
天狗は慢心の山伏がなるもので、その姿は山林に住む鳥そのものだという。修行する者にとって、仏道を妨げるものの一つとして、怪異な音は、鳥の声や羽ばたきだったとも言われる。