仏祖統紀 内容
本書が詳細に記述するのは、天台宗の伝法世系であり、兼ねてその他の各宗にわたっている。引用する内外の典籍は200種に近い。本書の欠点は、収録する名僧の間に往々にして僧名を記さず、山名、師号、寺名などによって代替し、徒らに後世の研究の困窮を増していることである。
その「志」中の「法運通塞志」(ほううん つうそくし、第34-48巻、全15巻)は、編年体の通史に相当する部分であり、『釈門正統』(しゃくもんせいとう)や、禅宗史書である『隆興仏教編年通論』(りゅうこうぶっきょうへんねんつうろん)などの先行書、元代の『仏祖歴代通載』(ぶっそれきだいつうさい)、明代の『釈氏稽古略』(しゃくしけいこりゃく)などの後代の書と同様、仏教伝来以来の歴史を通観するのに便利な書物となっている。但し、唐代以前の部分に関しては、引用の誤りなども散見されるため、利用する際には、原典に当たって記述を確認する必要がある。
また、その中には、仏教のみにとどまらず、道教・マニ教・ゾロアスター教などの記事も含まれるため、天台宗史・中国仏教史のみならず、中国の宗教史の研究の上で、貴重な資料を提供している。