分霊(ぶんれい、わけみたま) (神道)
分霊(ぶんれい、わけみたま)とは、神道の用語で、本社の祭神(さいじん)を他所でも祀る際、その神の神霊を分かちたもののことである。
分霊を他の神社に移して鎮祭することを勧請(かんじょう)という。分祀(ぶんし)ともいうが、分祀については分遷の意で使われることもある(後述)。神道では、神霊は無限に分けることができ、分霊しても元の神霊の神威は損なわれず、分霊もまた本社の神霊と同じ働きをすると考えられている。他の神社より祭神を勧請した神社のことを分祠(ぶんし)、分社(ぶんしゃ)、今宮(いまみや)などという。
多くの場合、勧請はその神の根源とされる神社から行われ、その神社のことを総本社・総本宮などという。分霊された神社の多くは、勧請された神の名前やそれに因む名前を社名としており、それらを系列社という。例えば稲荷(いなり)神社の総本社は伏見稲荷大社であり、ほとんどの稲荷神社は伏見稲荷大社からの神霊の勧請を受けている。
八幡神社(はちまんじんじゃ)の総本社は宇佐神宮(うさじんぐう)で、全国の八幡神社は宇佐神宮、または宇佐神宮から勧請を受けた石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)、あるいはさらに石清水八幡宮から勧請を受けた鶴岡八幡宮(つるおかはちまんぐう)のどれかから祭神の勧請を受けている。
勧請という言葉は、元々は仏教用語で、仏に教えを請い、いつまでも衆生を救ってくれるよう請願することを指した。日本では、神仏習合により、神仏の霊を迎えて祈願することを指すようになり、後に現在の意味に変化した。
分祀という言葉は、ある神社に複数の祭神が祀られている場合に、そのうち一部の祭神のみを他所に移して祀ることを指す分遷(ぶんせん)の語義で使われる場合もある(「分遷」の例:伊太)。分霊の場合は、全ての祭神の神霊が分けられる。
降神・昇神
また、神札(しんさつ)や御守(おまもり)にその神社の祭神の加護を加える降神(こうしん)も分霊の1つである。その逆は昇神(しょうしん)で、それらや御神体(ごしんたい)から祭神の神霊にお帰り頂く事をいう。これでそれらはただの物になり、左義長(さぎちょう)でお焚き上げが可能となる。仏教用語では降神を開眼(かいげん)、昇神を撥遣(はっけん)などという。