秘仏の分類
宗派別
宗派別では、真言宗及び天台宗の寺院に本尊を秘仏とするところが比較的多い。天台系の主要寺院では、延暦寺根本中堂本尊の薬師如来像、同寺西塔釈迦堂本尊の釈迦如来像、園城寺(おんじょうじ。三井寺)金堂本尊の弥勒菩薩像、同寺観音堂本尊の如意輪観音像などはいずれも秘仏である。真言宗では、高野山金剛峰寺金堂の本尊であった阿閦(あしゅく)如来像(薬師如来と同体ともいう)は1926年に堂とともに焼失してしまったが、厳重な秘仏で、写真撮影もされていなかったため、その像容は永遠に謎となってしまった。
浄土教系、禅宗系の寺院には秘仏は比較的少ない。ただし、これらの宗派に秘仏が皆無という訳ではなく、例えば浄土宗大本山の増上寺(ぞうじょうじ。東京都港区)安国殿本尊の阿弥陀如来像(通称黒本尊)は秘仏である。
像種別
如来像、菩薩像、明王像、天部像のいずれにも秘仏となっているものがあり、厳密には「仏像」の範疇に入らないが、蔵王権現(ざおうごんげん)のような垂迹像、鑑真像、聖徳太子像のような祖師像にも秘仏となっているものがある。像種別には薬師如来、観音菩薩、不動明王に秘仏となっているものが比較的多く、秘仏は総じて密教系の仏に多い(薬師如来は顕教系の仏だが密教寺院で本尊とされることが多い)。西国三十三箇所の札所寺院はすべて観音像を祀っているが、その大部分が秘仏であり、札所本尊が秘仏でないのは33か寺中、6番南法華寺(みなみほっけじ。壺阪寺(つぼさかでら))、7番岡寺(おかでら。龍蓋寺(りゅうがいじ))、8番長谷寺(はせでら)、25番播州清水寺(ばんしゅうきよみずでら)、32番観音正寺(かんのんしょうじ)の観音像のみとなっている。
公開時期
秘仏の公開時期には様々なパターンがある。
§ 毎年春・秋などの一定の時期に比較的長く開扉されるもの(例:法隆寺の救世観音像、浄瑠璃寺(じょうるりじ)の吉祥天像など)
§ 毎月1回決まった日に開扉されるもの(例:観音の縁日である毎月18日に開扉される、大阪・葛井寺(ふじいでら)の千手観音像など)
§ 1年のうち、1日ないし数日しか開扉されないもの(例:毎年12月16日のみ開扉される、東大寺法華堂の執金剛神(しつこんごうしん)像など)
§ 数年ないし数十年に一度しか開扉されないもの(例:33年に一度の開扉とされている京都・清水寺(きよみずでら)本尊千手観音像など)観音像に「33年に一度」の開扉とされるものが多いのは、観音は33の姿に変身して衆生を救うと経典に説かれていることによる。
§ 原則非公開で、開扉時期を特に定めていないもの(例:東寺御影堂の不動明王像など)
§ 絶対の秘仏で、写真も公開されていないもの(例:東大寺二月堂本尊十一面観音像など)