歎異抄 写本
写本としては、蓮如本・端の坊永正本(はしのぼうえいしょうぼん)などがある。2009年現在、原本は発見されていない。
蓮如本と永正本とには、助詞などの違いが見られるが、全体の内容として大きな違いは無い。写本毎の違いとしては、後序の後にある、「附録」が蓮如本にはあり、永正本にはない。
また、蓮如本には、蓮如の署名と次のような奥書が付されている。
右斯聖教者為当流大事聖教也 (右、かくの聖教は、当流大事の聖教と為すなり。)
於無宿善機無左右不可許之者也 (宿善の機無きにおいては、左右無く之を許すべからざるものなり。)
釈蓮如 御判
すなわち、本書は「当流大事の聖教」ではあるけれど、「宿善の機無き」者にはいたずらに見せるべきではない、と蓮如は記している。このため長らく秘本とされ世に広く知られることはなかったとする向きもあるが、実際には江戸時代にも『歎異抄』は、真宗聖典の一部に編入されており、秘本の扱いではない。明治に入ってから清澤満之(きよざわ まんし)・近角常観(ちかずみ じょうかん)らによって再評価されるまで注目されなかった。また蓮如が著した『御文』(おふみ。『御文章』(ごぶんしょう))において、『歎異抄』の内容の引用が随所に見られる。