大谷廟堂（おおたにびょうどう）

大谷廟堂（おおたにびょうどう）は、浄土真宗の宗祖とされる親鸞の墓所である。『御伝鈔』（ごでんしょう）によると「吉水の北の辺」とあり、京都市東山区林下町付近にあったと推定される。現在その地には、知恩院の塔頭（たっちゅう）「崇泰院」（そうたいいん）が建ち、門前に「親鸞聖人旧御廟所」・「大谷本願寺故地」の石碑が立つ。

文久（ぶんきゅう）9年（1272年）に建立され、元亨（げんこう、げんきょう）元年（1321年）には「本願寺」と号し寺格化する。寛正（かんしょう）6年（1465年）に、延暦寺西塔の衆徒によって破却される。

「本願寺」は数回にわたり寺基を移しているため、寺格化してから破却されるまでの「本願寺」を便宜上「大谷本願寺」と呼ぶ場合がある。

歴史

弘長（こうちょう）2年（1262年）11月28日、親鸞入滅する。京都鳥部野北辺の「大谷」に葬られる。

文久（ぶんきゅう）9年（1272年）（入滅から10年後）、東国にいる親鸞の弟子たちの協力を得た親鸞の娘覚信尼（かくしんに）により、「大谷」から「吉水の北辺」に改葬し「大谷廟堂」が建立される。

弘安（こうあん）6年（1283年）頃、覚信尼入滅する。

永仁（えいにん）3年（1295年）、親鸞の御影像を安置し「大谷影堂」となる。

正安（しょうあん）4年（1302年）、覚恵（かくえ）と唯善（ゆいぜん）の間に起こった留守職就任問題（唯善事件）が勃発する。

徳治（とくじ）元年（1306年）、覚恵は唯善に大谷影堂の鍵を強奪され、占拠される。

徳治2年（1307年）、覚惠は三条朱雀にて入滅する。

延慶（えんぎょう）2年（1309年）7月、青蓮院（しょうれんいん）により大谷廟堂留守職は、覚如（かくにょ）に継承される事が裁定される。敗れた唯善は、「大谷影堂」を徹底的に破壊し、「御影像」（親鸞の木像）と遺骨の一部を奪い、鎌倉へ逃亡する。

東国門徒は、大谷廟堂留守職継承を血縁に限定されるのを嫌い、覚如が留守職を継承することを無条件には認めなかった。覚如は、やむなく留守職継承を前提とした『十二か条からなる懇望状』（同年7月26日付）を記す。

延慶3年（1310年）、東国へ勧進と留守職承認の懇願のためにおもむく。半年にわたる懇願の末、承認され正式に留守職を継承する。

延慶4年/応長（おうちょう）元年（1311年）、覚如は親鸞の五十回忌に当たり「御影像」と影堂を再建する。

応長2年（1312年）、覚如は「大谷影堂」（「大谷廟堂」）を寺格化しようと「専修寺」と額を掲げるが、叡山（えいざん）の反対により撤去する。

元亨元年（1321年）、覚如は再度寺院化を試み「本願寺」と号し成立する。

寛正6年（1465年）、本願寺八世蓮如（れんにょ）が宗主の時に「本願寺」は延暦寺西塔の衆徒により破却される（寛正の法難）。この法難に遭うまで「本願寺」はこの地にあった。