浄土真宗 習俗



他の仏教宗派に対する真宗の最大の違いは、僧侶に肉食妻帯が許される、無戒であるという点にある(明治まで、表立って妻帯の許される仏教宗派は真宗のみであった)。そもそもは、「一般の僧侶という概念(世間との縁を断って出家し修行する人々)や、世間内で生活する仏教徒(在家、ざいけ)としての規範からはみ出さざるを得ない人々を救済するのが本願念仏である」と、師法然から継承した親鸞が、それを実践し僧として初めて公式に妻帯し子をもうけたことに由来する。そのため、真宗には血縁関係による血脈と、師弟関係による法脈の2つの系譜が存在する。与えられる名前戒名(かいみょう)ではなく、法名(ほうみょう)と言う。



真宗は、ただ如来の働きにまかせて、全ての人は往生することが出来るとする教えから、他の宗派と比べ多くの宗教儀式や習俗にとらわれず、報恩謝徳の念仏と聞法(もんぼう)を大事にする。仏教宗派の中では、唯一加持祈祷(かじきとう)を行わないのも大きな特徴である。また合理性を重んじ、作法や教えも簡潔であったことから、近世には庶民に広く受け入れられたが、他の宗派からはかえって反発を買い、「門徒(もんと)物知らず」(門徒とは真宗の信者のこと)などと揶揄(やゆ)される事もしばしばであった。

また真宗は、本尊(「南無阿弥陀仏」の名号(みょうごう)・絵像・木像)の各戸への安置を奨励した。これを安置する仏壇荘厳(しょうごん)に関しての「決まり」が他の宗派に比して厳密である。荘厳は各宗派の本山を模していることから、宗派ごとに形状・仏具が異る。仏壇に、本尊を安置し荘厳されたものを、真宗では「御内仏」(おないぶつ)と呼ぶ。真宗においては、先祖壇や祈祷壇として用いない。



真宗の本山には、そのいずれにおいても基本的に、本尊阿弥陀如来を安置する本堂(阿弥陀堂)とは別に、宗祖親鸞の真影(しんえい)を安置する御影堂(みえいどう)がある。真宗の寺院建築には他にも内陣に比べて外陣が広いなど、他宗に見られない特徴がある。また各派ともに、宗祖親鸞聖人の祥月命日に、「報恩講(ほうおんこう)と呼ばれる法会(ほうえ)を厳修(ごんしゅ)する。その旨は、求道(ぐどう)・弘教(ぐきょう)の恩徳と、それを通じて信知せしめられた阿弥陀如来の恩徳とに報謝し、その教えを聞信する法会である。またこの法会を、年間最大の行事とする。ただし、真宗各派でその日は異なる。