線香(せんこう)
線香(せんこう)は、火をつけることで芳香のある煙を出す、好まれる香りを出す材料を細かくして練り合わせ細い棒状や渦巻き状に成型して乾燥させたものである。香(こう)の一種。
線香は、香の中でも練り合わせて固め棒状としたものであり、「線のように細い」ものが線香と呼ばれうる。香の中には練香(ねりこう)と呼ばれる丸薬状の香もあるが、線香ほどは乾燥させないのが普通である。細く長くさせたのは燃焼時間を伸ばし香りの発生を一定とするためでもあり、また燃焼が安定していることから扱い易い。燃焼時間を延長させる意図で渦巻状の線香もあるが、これは香りを楽しむものと蚊取り線香(蚊遣器(かやりき))のような実利的な燃焼時間延長のためのものが見られる。
日本ではお墓や仏壇にお供えとして燻(いぶ)らせたりする用法が一般的である。日本に伝来した時期ははっきりしないが、堺で線香の形状が発明され、一般に用いられるようになったのは江戸時代以降である。最近では花の香りや香水調などさまざまな香りを持つ新しい線香も増えており、部屋の臭い消しや芳香剤・ヒーリンググッズとしての使用法も増えている。
また、江戸時代では時計の代わりとしても使用され、禅寺では線香が1本燃え尽きるまでの時間 (40分) を一炷(いっちゅう)と呼び、坐禅を行う時間の単位としたほか、遊郭(ゆうかく)では1回の遊びの時間をやはり線香の燃え尽きる時間を基準として計ったが、中には線香を途中で折って時間を短縮させる遊女もいた。