供物(くもつ)



供物(くもつ)とは、宗教儀礼として神仏先祖、あるいは故人など、信仰・崇拝を目的に、霊前に捧げる供え物をさす。教義によりさまざまな供え物があるが、神道ではなどのほか玉串(たまぐし)、青果物、生干物菓子類の飲食物等。正月には、鏡餅を供える。仏教では神道同様の供え物のほかに生花なども供える。





神道

日本においては、神々に感謝・祈願しを鎮めるため神社などに供物を捧げる習慣が、古来から神道儀礼として定着してきた。

とりわけ稲作中心の農耕文化であったため、気象条件により年によっては凶作となった。そこで、新米など新しい五穀を供えてその年の収穫に感謝し、豊作を祈願する稲作儀礼がさかんに行なわれ、その一端として天皇家で行なわれる新嘗祭(にいなめさい)大嘗祭(だいじょうさい)にもその儀礼が伝わっている。

農耕に限らず、神社信仰においては、大漁、安産、地鎮祭(じちんさい)七五三詣などはもとより私的な細事に至るまで、日頃から供物を捧げて祈願する。神社などの儀礼施設に限らず、個人の居宅にも神棚(かみだな)を設けて、榊(さかき)灯明(とうみょう)とともに神饌(しんせん)と呼ばれる供物を捧げることにより家内安全や招福を祈願し、今日でもその伝統は残されている。





仏教

仏教では主に、葬儀仏壇などで灯明や香華(こうげ。お線香)を配し、神道同様の供物のほか、生花などが一般的だが、生花の場合は供花・仏花と呼ばれる。また、葬式年忌では故人が好んでいたものを供えることも多く、さらに祖霊(それい)信仰などで供物を捧げるのも一般的である。