遍路道の起点
四国八十八箇所霊場は環状になっているため、遍路はどこから始めてもよいとされている。従って遍路道の基点というものは本来考える必要はない。しかし、札所番号が決まってからの遍路の多くは、案内書が一番札所の霊山寺(りょうぜんじ)から順に紹介していること、一という数字に引かれること、四国八十八箇所は弘法大師が密教の曼荼羅の世界を四国に投影したという思想によって、阿波を発心(ほっしん。発菩提心(ほつぼだいしん)。)の道場、土佐を修行(しゅぎょう)の道場、伊予を菩提(ぼだい)の道場、讃岐を涅槃(ねはん)の道場と呼ぶのでその順番に引かれること、などの点からどうしても一番札所から始める遍路が多かったと考えられ、それは現代でも同様である。そして、近代以前より大坂方面からの遍路のほとんどは淡路島を経由して岡崎港(鳴門市撫養町(むやちょう)岡崎)へ上陸し撫養街道を通って一番札所の霊山寺へ向かったことを考えると、遍路道の基点を鳴門市の岡崎港と考えることもできる。