四国八十八箇所 歴史
②四国遍路の成立
江戸時代初期に「四国遍路」という言葉と概念が成立したとされる。この頃には僧侶だけでなく民衆が遍歴しはじめる。17世紀には真念という僧によって『四国遍路道指南』(-みちしるべ)という今日でいうガイドブックが書かれている。手の形の矢印で順路を示した遍路道の石造の道しるべも篤志家によってこの時期に設置され始めたと言われる。修行僧や信仰目的の巡礼者以外にも、ハンセン病患者などの、故郷を追われた、もしくは捨てざるをえなかった者たちが四国遍路を終生行う「職業遍路」が存在した。また、犯罪やそれに類する行為で故郷を追われた者も同様に居たといわれている。もっともこれらの者たちも、信仰によって病気が治るのではないかという期待や、信仰による贖罪(しょくざい)であったので、信仰が目的であったともいえる。また、信仰によって病気や身体の機能不全が治るのではないかと一縷の望みをかけ、現代でいう視聴覚障害者や身体障害者が巡礼することも始まった。その後、地区によっては一種の通過儀礼として村内の若衆が遍路に出るといったこともあったとされる。