ダライ・ラマ



ダライ・ラマ(Dalai Lama,taa-la’i bla-ma)は、チベット仏教において最上位に位置する化身ラマ名跡。また17世紀1642年)に発足したチベット政府の長として、チベット元首としての地位も保有。チベット動乱の結果、1959年に発足した「チベット臨時政府(のちチベット亡命政府)」においても引き続き元首としての位置づけを受けている。



チベット仏教では、チベットの国土と衆生は「観音菩薩の所化(しょけ。教化を受ける者。弟子)」と位置づけられ、ダライ・ラマはその観音菩薩化身とされている。ラサポタラは、第5世以降の歴代ダライ・ラマの居城であり、チベット仏教における聖地となっている。チベット仏教の信者らはその居城へ一生に一度は巡礼することを目標としており(最も聖なる巡礼方法は五体投地(ごたいとうち)とされる)、信者らからはノルブ(如意宝珠(にょいほうじゅ)の意)と尊称される存在である。




呼称

「ダライ・ラマ」は、16世紀モンゴルの最高実力者アルタン・ハーンより贈られたモンゴル語の称号に由来し、アジア、欧米などで広く用いられる通称。チベット語でも、(taa-la’i bla-ma)と表記される(標準チベット語(ラサ方言)ではターレーラーマと発音)が、チベット自体では対外的文書などに用いられるに過ぎず、チベット人自身の間では敬称として「ギャルワ(またはギャワ、ラサ方言ではゲェワ)・リンポチェ」(法王猊下)や「クンドゥン」(陛下または猊下)などと呼ばれる。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所では、日本語名称は「ダライ・ラマ法王」、敬称は「猊下」(His Holiness)としている。仏教史 ァイセル』では「タムチェキェンバ(thams cad mkyen pa)」、同『パクサムジョンサン』では「ギャルワン(rgyal dbang)」の称号で呼ばれている。

ラテン文字慣用表記Dalai Lama, ワイリー方式taa-la’i bla-ma, 中国語簡体字达赖喇嘛繁体字達賴喇嘛漢語ピンインDálài Lǎmāなど。





化身ラマの名跡「ダライ・ラマ」の継承

ダライ・ラマが没すると、僧たちによって次のダライ・ラマが生まれる地方やいくつかの特徴が予言される。その場所に行き子供を探し、誕生時の特徴や幼少時のくせなどを元に、その予言に合致する子供を候補者として選ぶ。その上でその候補者が本当の化身かどうかを前世の記憶を試して調査する。例えば、先代ゆかりの品物とそうでない品物を同時に見せて、ダライ・ラマの持ち物に愛着を示した時、あるいはその持ち物で先代が行っていた事と同様のくせを行ったりしたときなど、その子供がダライ・ラマの生まれ変わりと認定される。

認定された転生者は幼児期にして直ちに法王継承の儀式を受けるが、この時点ではあくまで宗教的権威に留まる。成人に達すると(通例は18歳)「チベット王」として改めて即位を執り行い、初めて政治的地位を持つこととなる。先代の遷化(死亡)から新法王の即位までの間は、摂政が国家元首の地位と一切の政務を代行する。