一乗(いちじょう)



一乗(いちじょう)とは、仏教、とりわけ大乗仏教で、仏と成ることのできる唯一の教えのこと。一仏乗(いちぶつじょう)、仏乗(ぶつじょう)ともいう。「一」は唯一無二、「乗」は衆生を乗せて仏果に運ぶ教法の意。



天台宗の教学では、人間の心の境涯を、

地獄(じごく)- 餓鬼(がき) - 畜生(ちくしょう) - 修羅(しゅら)

- 人間(にんげん) - 天上(てんじょう) - 声聞(しょうもん)

- 縁覚(えんがく) - 菩薩(ぼさつ) - 仏(ぶつ)

の十の世界(十界、じっかい)に分ける。そしてその中で、


§ 声聞と縁覚を小乗の教法として二乗(にじょう)と呼び、菩薩・仏の大乗の教法と分ける。


§ 声聞・縁覚・菩薩を三乗(さんじょう)と呼ぶ。


§ 人間界から菩薩界までを五乗(ごじょう)と呼ぶ。


一乗は、これら二乗・三乗・五乗の教法に対する語である。一般的には、『法華経』が一乗の教えといわれるので、「法華一乗」などと言う。



使用例

§ 「如来は但(ただ)、一仏乗をもっての故にのみ、衆生のために法を説きたもう。余乗の若しくは二、若しくは三あることなし」 -- 『法華経』方便品

§ 「この経(涅槃経)を名づけて仏乗となす。この仏乗は最勝最上である」

-- 『涅槃経』四依品