ニンマ派の特徴
本尊
ニンマ派の修行の中心となるのは「大幻化網タントラ」(マハマーヤジャーラ)と、その主尊である「大幻化金剛」の教えに加えて、「ゾクチェン」の見解とその「グルヨガ」である。
しかし、その前段階として古タントラの「パルド・トェ・ドル」(チベット死者の書)の実践法である「シトー」(寂静と憤怒の百尊法:「文武百尊法」と漢訳)やイダム(守護尊)として「八大へールカ」の体系の修法があり、「グルツェンギェー」(蓮華生大師八大変化法:「蓮華生大師除障道」と漢訳)や「サンバルンジィ」(蓮華生大師十三法:「蓮華生大師如意満願道」と漢訳)などがある。
それらを完成に導くために「前行」(ンゴンドゥ:大礼拝・金剛サッタ法・曼荼羅供養・グルヨガの四つの部分からなる修法と瞑想、「四加行」とも表記)を基礎として、四大宗派共通の日課経典でもある「聖妙吉祥真実名義経」の読誦と、その経中の「大幻化頌」(大幻化網タントラの要約)の理解に加えて、先の修法に関係する無上瑜伽タントラに基づく尊挌を集めた 1.「グル」(導師、上師)、2.「デワ」(守護尊、護法神)、3.「ダキニ」(空行母、護法女神)の三本尊を祀る「三根本法」(「三本尊法」とも表記)がある。 なお、ロンチェン・ニンティクでは前行に「チュウ」(「施身法」と漢訳:四つの布施の行からなり「悪魔払い」と訳す例もあるが、内容からいうと日本の「施餓鬼」(せがき)に相当する)と、「ポワ」(「転識」と漢訳:オウム事件で誤解された行法だが、実際は阿弥陀仏を主尊として極楽往生を願い求めるための瞑想)を入れるが、「チュウ」はシチェ派やチュウ派から伝わったものであり「カンドゥ・ケギャン」の声明が一般的であるが、グル・パドマサンバヴァが実際に伝えたインド伝来の法ではないし、「ポワ」は様々なバリエーションの法要形式がある(ニンマ派に近いディクン・カギュ派の大祭は有名)のでそれぞれ別行立てとされる。
「三根本法」では「グル」としてグル・パドマサンバヴァを中心に釈迦如来や観音、金剛薩埵(こんごうさった)、「デワ」としてグル・タポ(憤怒相の蓮華生大師)やマハカラ(憤怒相の大黒天:ニンマ派では高位のヘールカと同等の尊挌として扱う)、八大へールカのプルパ金剛、「ダキニ」としてシンハ・ムカ(獅子面空行母)やイシェ・ツォーギャル仏母(グル・パドマサンバヴァの直弟子)、マハカリ(憤怒相の吉祥天)、ターラ仏母等々を祀って法要や修法・瞑想等を行うことが多い。
つまりニンマ派の特徴としては、三つの伝承・三つの教法・三つの本尊で九乗の教義と憶えると理解しやすい。