出三蔵記集(しゅつさんぞうきしゅう)
『出三蔵記集』(しゅつ さんぞうきしゅう)とは、中国において現存する最古の仏教経典(仏典)目録(「経録」)である。
梁(りょう)の僧佑(そうゆう)撰、15巻。6世紀初めの成立である。撰者の僧佑にちなみ、「僧佑録」「佑録」という略称が用いられる。
本書は、後漢から梁までの仏典漢訳史(訳経史)及び中国仏教史上の基本史料である。「総経序」や「述列伝」の中には、中国や西域関係の史料となる記述も含まれており、単に仏教史の史料に止まらない面もある。
詮名録は、その多くを、釈道安(しゃく どうあん)撰の「綜理衆経目録」(道安録、安録)によって記していることが、本文中の注記によって知ることができる。このため本書によって亡佚(ぼうしつ)して現在に伝わらない道安録の姿を窺い知ることができる。また、その後に編纂された数点の経録を参考に校訂を行なっている。
中国文学者 興膳宏(こうぜん ひろし)は、僧佑の弟子であり、『文心雕龍』(ぶんしんちょうりゅう)の撰者として名高い劉勰(りゅうきょう)が、実際の編纂に大きな役割を果たしていたと推測する。
同時代で少し成立の遅れる慧皎(えこう)の『高僧伝』(こうそうでん)中の「訳経篇」の記事の多くは、本書の「述列伝」に基づいて書かれているとされる。
構成
§ 巻1 撰縁記 (経典史・経典成立および漢訳史)
§ 巻2 - 5 詮名録 (経典目録・後漢から梁までの分類目録に漢訳者名を附す、偽経・経典の注解)
§ 巻6 - 12 総経序 (経典の序文(経序)120編、中国撰述の仏教書を収録する)
§ 巻13 - 15 述列伝 (訳経者32名(外国人22名、中国人10名)の伝記を収める)