無量寿経優婆提舎願生偈

(むりょうじゅきょう うばだいしゃ がんしょうげ)



無量寿経優婆提舎願生偈』(むりょうじゅきょう うばだいしゃ がんしょうげ)とは、世親(せしん、天親(てんじん)) により撰述された『無量寿経』の注釈書を、後魏菩提流支(菩提留支、ぼだいるし)が漢訳した書である。『浄土論』、『往生論』、『無量寿経論』などと通称する。正式な原題は、『無量壽經優婆提願生偈』(婆藪般豆 造 後魏菩提留支訳)。

2011年現在、サンスクリット原典は発見されていない。漢訳書も菩提流支訳のみが現存する。





サンスクリット原典が発見されていないため、『浄土論』がどの『無量寿経』に対して漢訳された注釈書なのか諸説あり定説はない。従来より提唱されているのは、『仏説無量寿経』、もしくはそのサンスクリット原典である『大スカーヴァティーヴューハ』とする説や、「浄土三部経(じょうどさんぶきょう)とする説がある。また「浄土三部経」以外の浄土経典とする説もあるが、『浄土論』の「一心」と『無量寿経』に説かれる「本願」との関係性を踏まえると、『無量寿経』を除いて言及しているとは考えにくい。


偈頌げじゅ、韻文)と、それを解説した長行(じょうごう、散文)の部分からなり、特に後者においては、浄土往生の方法として「五念門」(ごねんもん)を説いている。

「五念門」とは、「礼拝」(らいはいもん) 「讃嘆門」(さんたんもん) 「作願門」(さがんもん) 「観察門」(かんざつもん) 「回向門」(えこうもん)の5つをさす。なかでも浄土を観想(かんそう)する「観察門」が中心で、17種の国土荘厳・8種の仏荘厳・4種の菩薩荘厳よりなる。





影響


中国

§ 前述のとおり、菩提流支が漢訳する。

§ 菩提流支と交友のあった曇鸞(どんらん)が、この『無量寿経優婆提舎願生偈』(『浄土論』)を再注釈し、『無量寿経 優婆提舎 願生偈註』(『浄土論註』・『往生論註』を撰述する。


日本

法然が、その思想に影響を受け、「浄土三部経」と並べて「三経一論」と重んじる。

その門弟である親鸞も「浄土三部経」と『浄土論』を重んじ、『浄土論』の注釈書である曇鸞の『浄土論註』と合わせて重用した。