選択本願念仏集 内容
選択(せんちゃく)本願(第十八願)に立脚して称名一行の専修を主張し、浄土宗の独立を宣言した、浄土宗の立教開宗の書である。
冒頭に「南無阿弥陀仏、往生之業、念仏為先」と念仏往生の宗義を標示し、以下十六章に分けて、称名念仏こそが、選択の行業である旨を述べている。
各章ともに、標章の文・引文・私釈の順で構成している。標章の文は主題を簡潔に示し、引文では標章の文を証明する経典や解釈の文を引き、私釈では「わたくしにいはく」として法然自身の解義が明示している。
なかでも第一の二門章、第二の二行章、第三の本願章の三章には、本書の要義が説かれる。
§ 二門章では、道綽(どうしゃく)によって仏教を「聖道門」(しょうどうもん)と「浄土門」(じょうどもん)に分け、「聖道門」を廃し、浄土宗の独立を宣言し、そのよりどころを三経一論(「浄土三部経」と『浄土論』)と定め、それが、曇鸞(どんらん)・道綽・善導(ぜんどう)などの師資相承によることを示す。
§ 二行章では、善導の『観経疏』(かんぎょうしょ、就行立信釈)などをうけて、五正行のなか、称名念仏こそ、仏願にかなった往生の正定業であることを説明し、雑行は捨てるべきであることを示す。
§ 本願章では、第十八願において、法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)は一切の余行を選捨して、念仏一行を選取されたといい、その理由は称名念仏こそが、最も勝れ、また最も修めやすい勝易具足の行法だからであると説いた。
この三章の意をまとめたものが本書の結論ともいうべき「三選の文」(結勧の文)であり、それが初めの題号および標宗の文とも呼応している。