八大竜王 一覧



一般的に次の順に番号がふられている。


1 難陀(ナンダ、なんだ - आनंद Ānanda)訳:歓喜。難陀と跋難陀は兄弟竜王で娑伽羅(サーガラ:大海)竜王と戦ったことがあった。『不空羂索神変真言経』(T1092)第十六章「広博摩尼香王品」にて。


2 跋難陀(ウパナンダ、ばつなんだ - उपनन्द Upananda)訳:亜歓喜。難陀の弟。難陀竜王と共にマガダ国を保護して飢饉(ききん)なからしめ、また釈迦如来の降生(こうせい、神仏が人間となってこの世に生まれること。降誕(ごうたん)の時、雨を降らしてこれを灌(そそ)ぎ、説法の会座(えざ。法会(ほうえ)、講説などの集まり)に必ず参じ、釈迦仏入滅の後は永く仏法を守護した。


3 娑伽羅(サーガラ、しゃから - सागर sāgara)訳:大海。龍宮の王。大海竜王。「沙掲羅」、「娑羯羅」などとも漢語に音訳された。法華経・提婆達多品に登場する八歳の龍女はこの竜王の第三王女で「善女(如)龍王」と呼ばれた。空海が新しく名付けることとなった清瀧権現(せいりゅうごんげん、せいりょうごんげん)も唐からついて来たこの娑伽羅竜王の同じ娘の事である。


4 和修吉ヴァースキ、わしゅきつ - वासुकि Vāsuki)「婆素鶏(ばすけい)」とも漢語に音訳された。サンスクリット語 वासुकि Vāsukiの意味は、「宝 (खजाना Khajānā)」と ほとんど同じである。よって、「宝有(ほうゆう)」、「宝称(ほうしょう)」とも別称された。陽の極まりである「九」、数が極めて大きく強力であるという意で「九」を冠し九頭とされることもあった。よって「九頭竜王(くずりゅうおう)」、「九頭龍大神」等 呼ばれることが日本では多く、九頭一身と言われ考えられるようになった。元の伝説では千あることから「多頭竜王(たとうりゅうおう)」と呼ばれることも稀にあった。もともとは、須弥山を守り細竜を取って食していたという。


5 徳叉迦タクシャカ、とくしゃか - Taksaka)訳:多舌、視毒。この龍が怒って凝視された時、その人は息絶えるといわれる。身延鏡(みのぶかがみ)金光明経から七面天女(しちめんてんにょ、七面大明神)は、タクシャカ竜王の娘とされている。


6 阿那婆達多(アナヴァタプタ、あなばだった - अनवतप्त Anavatapta)訳:清涼、無熱悩。阿耨達(あのくだつ)竜王ともいう。ヒマラヤの北にあるという神話上の池、阿耨達池(無熱悩池)に住し、四方に大河を出して人間の住む大陸 閻浮提(えんぶだい、贍部洲 せんぶしゅう)を潤すと謳われた。800里にも及ぶ池の岸辺は金・銀などの四宝よりなっていたという。竜王は菩薩の化身として尊崇せられた。


7 摩那斯(マナスヴィン、まなし -मनस्विन Manasvin)訳:大身、大力。阿修羅が海水をもって喜見城(きけんじょう)を侵したとき、身を踊らせて海水を押し戻したという。


8 優鉢羅(ウッパラカ、うはつら - Utpalaka)訳:青蓮華(Utpala)、黛色蓮華池。青蓮華竜王。青蓮華を生ずる池に住まうという。インドでは花弁や葉などの形状を比喩的に眼を現すことに用いるが、特に青睡蓮(nilotpala)は美しい眼に喩(たと)えられる。仏教では仏陀の眼は紺青色(こんじょういろ、nila)とされ、三十二相八十種好(さんじゅうにそうはちじっしゅこう)の一つ「眼色如紺青相」(げんじきにょこんじょうそう)となっている。「青蓮華」は、漢訳仏典で「優鉢華(ウハツケ)」、「優鉢羅華」などと音写される。中国で「青蓮宇(qinglianyu)(セイレンウ)」は仏教寺院の別称。また、仏教で「ウッパラ」といえば、「ウッパラヴァンナー」の故事が著名である。