灌頂(かんじょう)
灌頂(かんじょう)とは、主に密教で行う、頭頂に水を灌(そそ)ぎ、正統な継承者とする為の儀式。
元々は天竺(てんじく)といわれたインドで王の即位や立太子(りったいし、日本の天皇・中国の皇帝の皇子等を跡継ぎとして太子に立てること。)での風習である。釈迦の誕生日を祝う祭りである灌仏会(かんぶつえ)もこれの一例であったが、密教において複雑化した。数種類あり、場合によって使い分ける。日本では、805年に最澄(さいちょう)が高雄山(たかおさん)の神護寺(じんごじ)で初めて灌頂を行ったといわれる。最澄は渡唐の際に龍興寺の順暁から秘密灌頂を受け、後年、空海(くうかい)の招来した金剛界・胎蔵界の灌頂も受けた。
種類
灌頂の種類は以下の通り。
結縁灌頂(けちえんかんじょう)
出家(しゅっけ)して、どの仏に守り本尊となってもらうかを決める儀式。投華得仏(とうけとくぶつ)といい、目隠しをして曼荼羅(まんだら)の上に華を投げ、華の落ちた所の仏と結縁する。曼荼羅には鬼神(きしん)や羅刹(らせつ)などもあるが、その場合でも、祀り方などや儀式を伝授される。空海は3度これを行い3度とも大日如来の上に落ちた。
受明灌頂(じゅみょうかんじょう)
修行して密教を深く学ぼうとする人に対して行われる。仏と縁を結ぶ入門的な結縁灌頂と違い、弟子としての資格を得る灌頂なので、弟子灌頂ともいう。
伝法灌頂(でんぼうかんじょう)、金胎両部伝法灌頂
阿闍梨(あじゃり、あざり)という指導者の位を授ける灌頂。四度加行(しどけぎょう)という密教の修行を終えた人のみが受けられる。ここで密教の奥義(おうぎ)が伝授され、弟子を持つことを許される。また仏典だけに捉われず、口伝や仏意などを以って弟子を指導することができ、またさらには正式に一宗一派を開くことができるともされる。阿闍梨灌頂、または受職灌頂ともいう。
また、日本では鎌倉時代から幕末にかけて天皇の即位式には即位灌頂という行事が行われていた。灌頂を受けた者として、後鳥羽院・後深草院の名が記録されている。