大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみったきょう)



大般若波羅蜜多経』(だいはんにゃはらみったきょう)とは、大乗仏教の基礎的教義が書かれている長短様々な般若教典を集大成したものである。通称は大般若経で、般若経(はんにゃぎょう)と略称することもある。600巻余の膨大な経典である。




沿革

般若経典は150年頃に現在の形の原形が成立し、サンスクリット文字にて文書化され、以後長短様々な般若経典へと発展していった。630年頃、玄奘(げんじょう)がインド等からそれらの般若経典群を中国へ持ち帰り、更に玄奘自ら翻訳の指揮を取って4年の歳月を掛けて漢訳し、663年『大般若波羅蜜多経』が完成した。 この漢訳は広く日本にも伝えられており、現在日本国内の各寺院に保存されている大般若経はこれである。

ただし、この『大般若波羅蜜多経』のサンスクリット本は発見されておらず、さらに『仁王般若波羅蜜経』偽経説などもあるため、翻訳時に玄奘自身或いはその周辺者による研究・加筆・集大成が行われた可能性もある。

なお、この膨大な教典を300余文字に要約したものが『般若心経』であるという説があるが、『大般若波羅蜜多経』には般若心経そのものは含まれておらず定説はない。ただし古来類似した部分があることは知られているが、この部分は鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』の該当部分の方が般若心経のテキストに近いので『般若心経』偽経(ぎきょう9説の根拠となっている。





日本での扱い

現在日本においては、この600余巻の教典を読経する大般若会が真言・天台等の密教系宗派や禅宗において盛んに行われている。但しこの膨大な教典を完全に読誦することは過去に数例の記録があるのみで、現在は転読(てんどく)と呼ばれる、教典をパラパラとめくっては、般若心経末尾の真言や『転読大般若経中唱文』などを読誦して一巻を読誦したことにする儀典で行われることが多い。

日蓮宗浄土真宗等を除く、日本の大部分の宗派はこの経をその教義の基礎と位置づけ、依用しているが、当然ながら玄奘以前は旧訳の各種般若経が用いられていた。