閻魔(えんま)
閻魔(えんま)は仏教・ヒンドゥー教などで地獄の主。また神とも。冥界の王・総司(そうつかさ)として死者の生前の罪を裁くと考えられる。
閻魔は、サンスクリット語及びパーリ語のヤマ (यम, Yama) の音訳。
ヤマラージャ(यमराज, Yama-rāja、ラージャは王の意味)とも。音訳は閻魔羅闍(えんまらじゃ)、意訳は閻魔大王(えんまだいおう)。略して閻羅(えんら)、閻羅王(えんらおう)、閻王(えんおう)、閻(えん)とも。
Yama(閻魔)は、縛、雙世、雙王、静息、遮正、平等などと和訳される。“縛”は罪人を捕縛する意、“雙世”は彼が世中、常に苦楽の2つの報いを受ける意、“雙王”は兄妹一対で2人並びたる王の意、また“平等”は罪人を平等に裁くとの意から、これらの和訳がある。
日本
日本仏教においては地蔵菩薩(じぞうぼさつ)と同一の存在と解され、これは地蔵菩薩の化身ともされている。後に閻魔の本地とされる地蔵菩薩が奈良時代には『地蔵十輪経』(じぞうじゅうりんきょう)によって伝来していた。しかし、現世利益優先の当時の世相のもとでは普及しなかった。
平安時代になって末法思想が蔓延するにしたがい源信らによって平安初期には貴族、平安後期には一般民衆と広く布教されるようになり、鎌倉初期には預修十王生七経(よしゅうじゅうおうしょうしちきょう)から更なる偽経(ぎきょう)の『地蔵菩薩発心因縁十王経』(略して『地蔵十王経』)が生み出された。 これにより閻魔の本地が地蔵菩薩であるといわれ(ここから、一部で言われている閻魔と地蔵とを同一の尊格と考える説が派生した)、閻魔王のみならず十王信仰も普及するようになった。本地(ほんじ)である地蔵菩薩は地獄と浄土を往来出来るとされる。
十二天の焔摩天(えんまてん、閻魔天)は同じルーツを持つ神ともいわれる。中国では閻魔天が閻魔大王に習合されていたが、日本に伝わった時にそれぞれ別個に伝わったため同一存在が二つに分かれたとも考えられている。
日本では、嘘をついた子供を叱る際「閻魔様に舌を抜いて貰う」という俗信による民間伝承がある。
コンニャクが大好物であるという。東京・文京区の源覚寺(げんかくじ)にこんにゃくを供えれば眼病を治すという「こんにゃくえんま」像があるほか、各地の閻魔堂でこんにゃく炊きの行事が行われる。
大阪市浪速区には、閻魔を祀った西方寺閻魔堂(正式には「合邦辻閻魔堂西方寺」。創建は伝・聖徳太子)があり、浄瑠璃の「摂州合邦辻」の舞台にもなっている。