【リュカ=シンクレア 編】

(寝れない…)

私はごろんと寝返りを打って、小さく咳き込んだ。

(風邪かな…)

その時、隣に寝ているリュカが僅かに身じろぎをする。

(いけない、起こしちゃうよね…今日はリビングで寝よう)

そうして私は立ち上がってリビングへ向かった。


*  *  *  *

しばらくして、リュカがふと目を覚ました。

(ん…あれ、カノン…?)

隣で寝ていたはずのカノンの姿がない。

と、その時、リビングの方から微かに咳き込む音が聞こえる。

リビングへ行ってみると、ソファで寝苦しそうにしているカノンを見つけた。

「カノン?」

「あ、リュカ…!ごめん、起こしちゃった…?」

「ううん。それより大丈夫?具合悪い?」

リュカがソファの横に腰を下ろして聞くと、カノンがぱっと気まずそうに視線を逸らす。

「あ、ううん、大したことないんだけど…咳が出るからリュカを起こしちゃったらいけないと思って…」

「…!」

(それでリビングに… あーもう、なんで気づけなかったんだ)

リュカは切なげに眉を寄せて、カノンの頬をそっと撫でながら言う。

「そんなこと、気にしなくていいのに…具合悪い時はちゃんと言って欲しい」

「ありがとう…ごめんね、逆に迷惑かけちゃって」

「迷惑なんて言わないで。心配、させてほしいんだ」

「リュカ…」

具合が悪いせいか、カノンがいつもより熱っぽい目でリュカを見上げる。

(っ、あー…この顔心臓に悪い)

自分の頬に熱が集まるのを感じつつも、リュカはできる限り平静を保って優しくカノンを抱き上げる。

「俺は平気だから、ちゃんとベッドで寝て?カノンが我慢してる方がつらいから」

「うん…ありがとう」

カノンがそう言ってふわっと笑うと、リュカがカノンの前髪を分けて額に触れるだけのキスを落とした。

「っ、リュカ…」

「こっちは治ったらにするから…今はゆっくり休んで」

そう言ってリュカが微笑みながらカノンの唇をなぞる。

「うん…」

熱のせいか、カノンがいつもより素直に答える。

リュカがずっと髪を撫でてくれる心地よい感触を感じながら、カノンはそっと目を閉じて眠りについた――。


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【渋谷誠二 編】

「だから無理すんなっつったんだよ。体調悪いのに出勤して38度の熱でぶっ倒れて早退とか、バカかお前」

「う…ご、ごめん…」

そう言いつつ、私をベッドに寝かせてくれる誠二くんの手つきはこの上なく優しい。

今日は会社に出勤したものの体調が悪くなってしまい、丁度取引で来ていた誠二くんが家まで連れて帰ってきてくれたのだった。

「おー、反省しやがれ。わかったらこれ飲んで大人しく寝てろ」

言いながら誠二くんが薬とコップに入った水を持ってきてくれる。

「うん…ありがとう」

そう言って体を起こそうとしたけれど、

(痛っ…)

ひどい頭痛に思わず頭を抑える。

そんな私を見ていた誠二くんが、私の背中をベッドに押し戻した。

「無理すんな、寝てろ。薬くらい飲ませてやる」

そう言って私の口に錠剤を押し込み、コップに入った水を自分で呷る。

(え…?)

私が目を瞬かせていると、誠二くんがそのまま顔を寄せて、そっと口付けた。

「んっ…」

誠二くんが器用に口移しで水を飲ませてくれる。

舌先を伝って流れ込んできた水をこくんと飲み込むと、深く重なった唇を今さら意識して顔が熱くなった。

私が薬を飲み込むのを見届けると、誠二くんがゆっくり顔を離す。

「っ、はぁ…誠二くん、風邪移っちゃうよ…」

すっかり熱くなってしまった吐息を吐き出しながらそう言うと、誠二くんが優しく笑って言う。

「別にいい。俺に移してとっとと元気になりゃいいだろ」

「もう…」

そう言ってはみるものの、誠二くんの優しい顔を見ていると何も言い返せなくなる。

誠二くんの手がそっと私の頬を包み込むと、ひんやりした掌が気持ちよかった。

「ありがとう、誠二くん」

「おー。じゃ、あとはゆっくり寝とけ。向こうの部屋にいるからなんかあったら呼べよ」

そう言って誠二くんが私の髪をそっと梳くように撫でると立ち上がる。

(あ…)

熱のせいか、なんとなく1人になるのが心細いような気がして、私はとっさに誠二くんの服の裾を掴んだ。

「どーした?」

誠二くんが振り返る。

(う、やっぱりちょっと恥ずかしい…でも…)

「もうちょっと、側にいてほしい」

擦れた声でそう言うと誠二くんが微かに目を見開いて、それからふっと笑って言った。

「しょうがねえな。ほら、手出せ」

そして私の手をそっと握って隣に座り直すと、もう片方の手で優しく髪を撫でてくれる。

私はその心地よい感触にゆっくり目を閉じていった――。


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【立花薫 編】

「お邪魔します…」

私は沈んだ声でそう言うと、薫さんの部屋に上がる。

「何かあった?元気ないね」

薫さんが私を部屋に通しながら、心配そうに顔を除き込んで聞いた。

気遣うような視線に促されて、私は苦笑しつつ口を開く。

「実は今進めてる企画が全然上手くいかなくて…」

そうして、私は任されている企画が思うように進まなくて行き詰まっているという話をした。

「期限も迫ってるのに全然いい案も思いつかなくて…どうしたらいいのかわかんなくなってきちゃったんです」

思わず肩を落としてはぁっとため息をつく。

すると、薫さんがそんな私を横からふわっと抱きしめてくれた。

「そっか…頑張ってるんだね。お疲れ様。でもね花音さん、睡眠はちゃんと取らなきゃだめだよ?」

「え?」

私が目を瞬かせると、薫さんがそっと私の目元をなぞって言う。

「寝てないんじゃない?クマできてる」

「あ…」

図星だった。

思わず俯くと、薫さんが優しく私の髪を撫でる。

「頑張ってる花音さんを見てるのも好きだけど…無理はしないで。それにたまにはゆっくり休んだ方がリセットできて何か思いつくかもしれないよ?今日は俺に甘えていいから、ゆっくり休んで」

どこまでも優しい薫さんの声に、思わず涙が滲む。

その顔を隠すようにそっと薫さんの胸に額を預けた。

「ありがとうございます…ちょっと安心しました」

「うん。お疲れ様、花音さん」

そう言って薫さんがそっと私の前髪にキスを落とす。

心地よいその感触に、いつしか私の瞼はすっかり閉じていた――。


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【渋谷誠二 編】

一日の仕事を終えた私は、誠二くんの家に帰ってきた。

「ただいまー…遅くなっちゃってごめんね」

「おー。おつかれ」

「すぐ夕ご飯の支度するね」

「おい」

私がそう言ってキッチンに向かおうとすると、突然誠二くんが後ろからぎゅっと抱き締めた。

「っ、誠二くん?」

「飯なら作っといた。それよりお前、その空元気どうにかしろ」

「空元気って…」

(なんでわかるんだろう…)

「お前作り笑い下手なんだよ。疲れてんだろ」

「う…実は今日仕事で色々手違いがあって…そのせいで色んなとこ行き来してたからちょっと疲れちゃったかも…」

私が渋々答えると、誠二くんがはぁとため息をついて私の頭をくしゃくしゃっと撫でる。

「バーカ、言うのが遅ぇよ。そういうことなら今日は思いっきり甘やかしてやる」

誠二くんはそう言うなり、私の身体をひょいっと横抱きにしてリビングまで運ぶ。

「せ、誠二くん…私自分で歩けるよ?」

「うるせー。黙ってろ」

そう言いながらも、誠二くんの表情は優しい。

そして誠二くんは私をソファに降ろすと、そっと大切そうにキスした。

「すぐ飯用意するから待ってろ」

「え、私も手伝うよ」

「いいから、たまには素直にご主人様に甘えとけ」

そう言って誠二くんが優しく笑う。

「ありがとう、誠二くん…」

誠二くんの言葉にふっと甘えたい欲が湧いてきて、私はぎゅっと誠二くんに抱きついた。

「っ、お前…」

誠二くんが一瞬びっくりしたような素振りを見せたけれど、すぐにぎゅっと抱きしめ返してくれる。

「今日は一段と可愛い下僕だな」

「っ、もう…誠二くんが甘えろって言ったんだよ?」

「おー。下僕を甘やかすのがご主人様の仕事だからな」

面白がるような誠二くんの声が耳元で響く。

「また下僕下僕って…」

言い返しながらも、私も思わず頬を緩めた。

(誠二くんは下僕なんて言うけど…こんなに大事にしてもらってるんだもん、私すっごく幸せだな…)

心地よい誠二くんの腕の感触を感じながら、私はそっと目を閉じる。

愛しい人の温もりに包まれて、いつの間にか疲れはすっかり吹き飛んでいた――。



……………………end……………………


-あとがき-

久しぶりのSS更新でした。

キャラもタイトルもばらばら…誠二くん二回も出てくる…笑笑

Twitterで話してて生まれたネタで書いたものとかです。お遊び低クオごめんなさい…( -ω- `)

長編とか書きたいのですが、リアバタでなかなか思うように進まないという…

短編はTwitterやpixivにもちょくちょく載せてるのでよろしければお越しください( ´ ▽ ` )ノ


ちゃな。