父と暮らせば | 桜の樹

父と暮らせば

8月になりました~。


今日は1日で映画の日。

大濠公園の花火大会に行ってからホークスタウンのゲド戦記コースが

気になる・・・けど、どっちも人の多さに酔ってしまいそうですね(T_T)



さて、皆さんにとって『夏の映画』というのがありますか?

私は小6の時に担任の先生が教室でながしてくれた『スタンド・バイ・ミー』、

あとやっぱり『蛍の墓』でしょうか。



もう1つ、この時期ならではのお薦めしたい映画が宮沢りえ主演の

『父と暮らせば』です。

バンダイビジュアル
父と暮せば 通常版

広島に原爆が投下されて3年後の夏の物語。


冒頭では、テンポの良い広島弁の会話が耳元で転がって

その音が楽しく、更にはりえちゃんの可憐さに思わず見惚れてしまいます。

でも主人公・美津江の抱える

『あのとき生き残ってしまった』ことへの罪悪感、

『自分は幸せになってはいけない』という呪縛。

そのせいで身動きできなくなっている彼女が、ただただ哀れで・・・。

背景は、たった3年前の被爆の影響が未だ街にも人にも色濃く残っている時代です。

図書館で働く美津江は、公にされない原爆資料に興味を持つ木下青年(浅野忠信)と

出会いました。お互いに惹かれあう2人の恋愛を甲斐甲斐しく世話してくれるのは、

原田芳雄さん演じる父・竹造。自称・この恋の♪応援団長♪

幸福の一歩手前で躊躇して自制してしまう美津江のことを、

竹造でなくても私達でさえもどかしく思い、励ましたくなるはずです。


美津江の足を止めてしまった出来事とは一体何だったのでしょうか。


竹造とのほのぼのとした --- 時にまるで身を斬り合っているかのように激しい ---

会話の中で、主人公は自分の心の内を少しずつしぼりだしていきます。

3年前に刻まれた幾つかのビジョンは彼女を捕らえて離さないけれども、

ひとつひとつほどくように諭し、何とか娘を解放してやりたい父親。

扱っているテーマは観る側にとっては厳粛に感じられるものの

話の雰囲気は湿っぽすぎるわけでもなく、原田氏のカクシャクとした威勢の良さと

りえちゃんのおっとりした喋りの掛け合いに和まされることもしばしばでした。

登場人物はほぼこの3人のみで、どちらかというと映画というよりも舞台風の感覚で

進行していきます。


そうそう。

このお話、というか応援団長・竹造にはある『前提』が仕掛けてあり、

時間が過ぎる内に私達は必ずそのことに気づかされます。

そうしてこれが美津江の絶望と克服・再生へ深く関わっているのです。

彼女が未来を見つめた瞬間の、雨上がりの空みたいに清々しい表情は必見。



声高に『戦争反対』と叫んでいる映画ではないけれど、

登場人物達の痛烈な独白に、私は知らず知らず涙が溢れてきました。

学校とかで、夏休み中の出校日に鑑賞というのも良いような。

心にピタリと張り付いて、忘れられない作品です。