草原の記 | Winterecord

草原の記

草原の記 (新潮文庫)/司馬 遼太郎

¥420
Amazon.co.jp

 モンゴルを語るときほど、嬉々とした司馬遼太郎はいないだろう。

 モンゴル人は、「人工」を厭う。
 たとえば、人の世から、とことん「人工」を除いてみる。そこには何があるだろうか。きっと、天と地、ただそれだけである。だから、言うのであろう。「モンゴル高原が、天に近い」と。
 司馬遼太郎が本書を書いた時代、モンゴルはまだ社会主義の国だった。なぜ、彼らが社会主義を選んだか、という問いに対し、司馬遼太郎は「ただ漢人から草原を守りたかっただけ」であろうと答えている。まったく、雲を掴むような話だ。

 オゴタイの言葉を少し引用する。
「財宝がなんであろう。金銭がなんであるか。この世にあるものはすべて過ぎゆく。この世はすべて空だ」
「永遠なるものとはなにか、それは人間の記憶である」
 なんと、詩的な民族だろうか。

 この世に在るのは空と高原のみ、きっとそれがモンゴル人にとっての自然なのだ。そんな彼らから長寿王朝「清国」が起こったことを歴史の不思議といわずに何と言おう。