司馬遼太郎(2002)『翔ぶが如く(九)(十)』文春文庫 | Winterecord

司馬遼太郎(2002)『翔ぶが如く(九)(十)』文春文庫

翔ぶが如く〈9〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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 桐野は西南戦争を「天の利、地の利によって起つことがあるが、このたびは人によって起つ」と表現した。また、筆者は西南戦争を「宗教一揆に酷似」していると表現した。まったく両者ともよく言い当てているように思う。かたや東京では多くの留学生が欧米へと行くようになり、空前の国際化時代が到来している。それなのに、薩軍は西郷一人の存在によって国家を変えようという空疎な願いをもって、愚鈍な戦いを繰り広げている。これは「宗教的」という表現以外の何ものでもない。
 そもそも、そういった一つの宗教をもって、鹿児島県を独立国家たらしめていたものとは、いったい何だったのだろうか。それは、鹿児島という地理的要因かもしれないし、島津という歴史的要因かもしれない。ただそういう要因の数々が薩摩の強みでもあったし、弱みでもあった。今回の西南戦争における敗北では、その弱みが噴出してしまった。西南戦争とはただそれだけのことなのだろうが、明治を創った一人の英雄が迎えるこの運命には、非業の死を思わずにはいられない。