司馬遼太郎(2002)『翔ぶが如く(四)(五)』文春文庫 | Winterecord

司馬遼太郎(2002)『翔ぶが如く(四)(五)』文春文庫

翔ぶが如く〈4〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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翔ぶが如く〈5〉 (文春文庫)/司馬 遼太郎

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 西郷が下野して間も無く、江藤が佐賀にて蜂起する。難なくこれを押さえ込み、明治政府の威光をしらしめた大久保だったが、英仏の駐在大使らの唆し等により事態は思わぬ方向に展開する。それが、台湾出兵だ。あれほどまでに朝鮮との武力衝突への反対を堅持していたにもかかわらず、大久保たちは帰郷した西郷、及び近衛兵たちを慮り、台湾出兵を決断することになる。これは、当時の薩摩閥が持つ力の大きさを窺い知ることができるエピソードだが、そのような安直な動機付けで対外政策を行った当時の日本は、未だ近代国家への途遠しといったところだろう。出兵そのものは簡単に成功を収めるものの、当時の国際社会においても異例の行動であったこの出兵の調停は、清国との間に大きな問題を起こした。その混迷を断ち切るべく、急遽北京に渡った大久保は、その冷緻な政治感覚を活用することで、何とか解決に至るものの、台湾出兵に費やした代償はあまりにも大きかったといわざるをえない。交渉の途上に、英国大使ウェードにより、むしろ朝鮮を討つことを勧められてしまうくだりは、もう笑うしかない。
 明治維新後の混迷はここに極めつつある。乱雲の時代を象徴するような肥後熊本の士族、宮崎八郎は、一体どこに辿り着くのだろうか。大久保利通たった一人の動きが多く描かれた本巻においても、相変わらず木戸孝允の動きはコミカルで好印象だ。