魚住昭(2006)『野中広務 差別と権力』講談社文庫 | Winterecord

魚住昭(2006)『野中広務 差別と権力』講談社文庫

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)/魚住 昭

¥730
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 野中広務。彼の名前を聞いて何を想像するだろうか。それは老骸、利権、北朝鮮との癒着など決して良いイメージではないかもしれない。しかし、彼の背景にあったものはあまりに特殊であった。そしてそれを背負うことは決して光の見えることのない暗い闘いを意味するのだ。 本書は、差別という重い十字架を背負い続け、政治における権力闘争を生き抜いた、彼の壮絶な半生を綴っている。
 彼は、部落から求められる役割と部落外から求められる役割という二つの顔をうまく使い分け、『調停者』として権力を握っていった。その性質は中央政界に入ってからも変わることなく、利害の異なる集団の境界線上に身を置き、権力を発揮し続けた。特に彼の状況把握能力は恐ろしく卓越していたといえる。そして彼は「影の総理」として君臨するまでになった。
 しかし、彼でさえも差別を利用することはできても、結局、克服することがでなかったのだ。むしろ、先人よりも強く差別と向き合おうとした結果、辿り着いたのは、彼の人生を賭してまで成したものその全てを、まるであざ笑うかのような残酷な現実であった。人の心に潜むこの闇はどれほどに深いのだろうか。いやそれともそれは永田町であるからこそなのか。
 とにかく、その闇をひたすら突き進み、傷つき、嘆き、怒り、失望していった彼の半生は、ノンフィクションとは思えないほどに衝撃的であった。