司馬遼太郎(1972)『燃えよ剣』新潮文庫 | Winterecord

司馬遼太郎(1972)『燃えよ剣』新潮文庫

燃えよ剣 (上巻) (新潮文庫)/司馬 遼太郎

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燃えよ剣 (下巻) (新潮文庫)/司馬 遼太郎

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 本作では、新撰組の「鬼の副長」こと土方歳三の半生が描かれている。

 本作の中でも私は、新撰組が事実上崩壊したのちの物語に強く興味を持った。近藤・沖田亡き後、歳三は榎本武揚らとともに函館新政府樹立にその身を捧げていくのである。いわゆる、箱館戦争である。時流は完全に新政府軍の手に落ち、圧倒的に不利的状況に陥る歳三。彼は自らの思いを仲間たちに託した上で、自身の最期の場所を求めていったのだった。
 歳三は、何を最期まで守ろうとしたのか、と考えると、それは近藤や沖田といった多摩時代からの仲間だったように思う。彼らと共に、彼らのために歩んできた人生を、彼らの亡き後も決して曲げることなく、貫いたというのが、彼の生き様だったように思う。それが、この悲劇的な物語を演出していた。それに対し、筆者はひどく同情的であり、哀れみを抱いていた。
 しかし私は同じ幕末期の英傑でも、歳三ではなく竜馬に憧れる。竜馬はあくまで前のめりに、未来を見据えて生きていた。竜馬個人としての夢を描いた上で。その生き方は、時代を超えて現代に通ずるところがある。しかし、歳三の人生に未来を見た瞬間があっただろうか。身分社会への反発しか意識できずに、京に出てきてしまった。それゆえに、彼の生き方はその時代に強く依存し、翻弄されている。だから、彼の人生は私まで届くことがなかったのだ。