三島憲一(2006)『現代ドイツ―統一後の知的軌跡』岩波新書 | Winterecord

三島憲一(2006)『現代ドイツ―統一後の知的軌跡』岩波新書

現代ドイツ―統一後の知的軌跡 (岩波新書)/三島 憲一

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 ヨーロッパの国なら、ドイツに興味がある。神聖ローマ帝国に始まるドイツと呼ばれるこの国家は、いつだって私にとってはヨーロッパの中心だ。そんなドイツにおける、現代知識人たちの思想に触れているのが、本書だ。
 現代ドイツというと、つい「ネオナチ」をイメージしてしまう私だが、ドイツの知識人のもつ思想というのは「ネオナチ」に負けず劣らず、危なっかしいように感じた。そうした、ある意味バランスを逸しているようにみえる数々の思想の存在は、ドイツが未だナチスという「過去」の影響下にある証明である、ともいえそうだ。
 たとえば、90年代いゴルトハーゲンという学者が登場する。彼は、ドイツ人は無理矢理ではなく、自ら進んでユダヤ人殺しをしていたのだ、と主張する。そこでもちろん、この主張にドイツの歴史家たちは怒りを見せる。ある歴史家は、ゴルトハーゲンのしていることはホロコースト関係の議論でカネを儲ける、いわば「ホロコースト・ビジネス」だ、と批判する。またある作家は、「いつまでもナチの過去を。この我々の恥辱を毎日のように新聞、テレビ、シンポジウムなどで見せつけられ、論じられてはたまらない。論じる側に絶対の正義があるかのような議論もいい加減にしてほしい」と論ずる。すがすがしいほどに、幼稚でヒステリックな議論だ。
 ドイツ人の歴史に縛られ続ける姿が、我がことのように感じられ、痛々しく感じた。