花村萬月(2006)『百万遍 青の時代(上)』新潮文庫 | Winterecord

花村萬月(2006)『百万遍 青の時代(上)』新潮文庫

百万遍 青の時代〈上〉 (新潮文庫)/花村 萬月

¥700
Amazon.co.jp

 三島が死んだその日、惟朔は高校を辞め、教護院を飛び出る。その瞬間から始まる惟朔の「あてどない漂流」を描く本作。その上巻である。

 執拗な生々しさばかりが目に付いた。目を覆いたくなるような描写も幾度となく現れる。正直、不快だ。
 にもかかわらず本巻を読破できたのは、わたくしが主人公にどこか共感することができたからだ。彼の持つ幼さ、狡猾さ、愚かさ、汚さに自分を重ねることは、少なからず男性特有のロマンチシズムをくすぐるものだった。男には少なからず、こうした反社会的行為を礼賛する志向があるのだろう。
 もっとも筆者自身、自分の青春時代を自伝的に描いた本作を書き上げることで、自己陶酔に浸っていたに違いないし、実際にその自己陶酔を強く反映した作品であるように思う。それだけに非常に手応えのある作品に仕上がっているともいえよう。ただ、そのあまりの色の濃さは、読む人を選ぶことは必至だ。

 後編へと続く。