山崎豊子(1980)『華麗なる一族 上』新潮文庫 | Winterecord

山崎豊子(1980)『華麗なる一族 上』新潮文庫

華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫)/山崎 豊子

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 物語の序破急でいうところの、「序」にあたる巻である。

 本作は、現代の日本ではなく、少し時代をさかのぼった一昔前の日本を舞台としている。そこに登場する人物ひとりひとりの価値観には共鳴するところはあれども、今の価値観と比すると総じて時代錯誤なものが多かった。おそらく今現在ではいかに「華麗なる一族」であっても、これほどまでに閨閥結婚などの策が張り巡らされていることはないだろう。その点から、日本の文明がここ何十年のあいだに見違えるほどに変化したことが伺えて、興味深い。古来より存在する政略結婚がここ四半世紀で大きく減少してきているのは、なぜなのだろう。

 作品中で作者は、本作に登場する男たちを大きく二通りに分けている。作品中の言葉を借りれば、それは「大介型」と「敬介型」という区分である。そして、本作ではここまで「大介型」の価値観を「非」とし、「敬介型」の価値観を「是」とし展開している向きがあるように思える。この区分はあまりに一面的に過ぎるといえばそれまでだが、作調としては興味深い。

 筆者が、時代を逆行するものをいかに美しく導くか。そして「非」とする価値観に対し、いかなる勧善懲悪を与えるか。これが今後の見所であるように思う。