藤原正彦(1981)『若き数学者のアメリカ』新潮文庫 | Winterecord

藤原正彦(1981)『若き数学者のアメリカ』新潮文庫

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)/藤原 正彦

¥540
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 筆者の言葉は、とても愉しい。

 わたくしは未だ彼のベストセラーなるものに目を通したことがないのだが、それに至る原点が本書に隠されてると思う。彼は、日本人は国を離れると、途端に強烈な国粋主義者になると繰り返し述べる。その最たる例として彼自身が存在し、真っ向から反米精神を突きかざして、米社会へと突入していく彼の姿は少し無様で滑稽だが、純粋にカッコイイ。

 気が付けば「もし自分だったら…」と自分に重ね合わせて読んでしまうのが、この類の本にはよくあることだ。本書においてそうしたときに必ず感じたのが、筆者の純粋で豊かな感受性である。彼が「数学者」であることからは決して想像できない情緒深さと深い洞察力には、思わず感嘆してしまう。彼の文は、決して力強いものではない。どちらかというと俗っぽく素朴だ。しかしそれゆえだろうか、彼の文からはその「才」が滲み出ていることを感じてしまう。これは天賦の才?それとも遺伝子の影響?

 学者さんて変わった人種やなぁ、と「改めて」感じた一冊だった。