モーリヤックの『癩者への接吻』が発表されたのが1922年、その10年後に終章。それまでに書いた小説の中の人物をよりクリアにする狙いで次々に続編が発表された中の一つ。


夫を亡くし、舅と暮らすノエミ。舅は病気で気難しく、ノエミがちょっとでも外出するとあちこちイタイイタイが始まる。しかも遺言で再婚を禁止されたため、ノエミはほかに選択肢のない人生。その中での気晴らしが食べること。このため肥満。健康のために歩かなければならないノエミの息抜きは子どもたちの面倒をみるというご奉仕。


そういう牢獄のような生活の中で、ノエミはある日義父の死を待つ自分を感じる。憎悪ではない。ただ、彼女の唯一の楽しみがそういう生活から解放された後に旅に行くことを夢見ることだったり・・・


ある日ぷっつんした彼女は、舅の食事療法を無視して、スープを食べる。普通の人ならどうということはないささやかな日常。だけどそれがまるで殺人のようにおおげさになる。そして、好物を目の前にして我慢ができずにスープとワインを飲んだ舅。


彼女の甘い期待は裏切られ、舅の静かな寝息。そして、母親のように、病人に布団を掛けて彼女の一日は終わった。




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 ⇒ 『癩者への接吻』 若林真訳


■関連図書

 ⇒ モーリヤック著作集全6巻