めずらしく徹夜で読書してしまった。『癩者への接吻』を読み終えて、ジプシー・キングスを聴いているとほっとしてしまう。


モーリヤックの描く繊細で愛に飢えたる者の世界は、ひたすらランド地方の自然と登場人物の見ている風景により進められて行く。ストーリーはとても簡単。ランド地方に生まれた醜いブルジョアの息子が結婚する。彼は美しい妻に恋しているが、妻は彼を好きになることができない。窒息しそうな生活。そして、彼は結核に感染し、妻のやさしい愛に包まれて死ぬ。


ただそれだけのストーリーなのよね・・・幼い頃に母を失い、家の中に引きこもるように育てられ、愛する人と幸運にも結婚することになる。彼は妻の愛が欲しい。だけど、彼女はどうしても彼を男としては愛せない。窒息しそうな嫌悪感。それでいて貞淑な妻。


自分の存在が愛する人を苦しめているという現実。逃れられない自己嫌悪。そして、彼はわざと結核に感染してしまう。当時は不治の病。つまりは、結核に感染した友につくすという美しい行為による遠まわしの自殺。


そこには温かさなど微塵もなく、むしろ灼熱の荒野がよく似合う。




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 ⇒ 「癩者への接吻」終章 若林真訳


■関連図書

 ⇒ モーリヤック著作集全6巻