常打ち小屋をつくるのは、亡き草若師匠の悲願ではありましたが、そうやすやすと実現可能なことではありません。
何度となくひとりで奔走していた草若師匠は、1人胸のうちで考えていましたが、今の徒然亭のメンバーは、「天狗芸能に頼らず、自分の手でやろう。」と言う草々さんに、ちょっと待てと、それぞれの現実的な意見を言って再考を促します。
小草若さんは、この家を売ってまでと考えていた師匠に、「自分に遺産を残す事より落語を取った。」と言い、四草さんに「甘ったれた事を。」突っ込まれます。常打ち小屋のことで師匠が奔走していた頃、お金を騙し取られたり、天狗芸能に干されたり、悪い事ばかり起こったと、不吉な事のように言って不賛成です。
だいたい、思い出の残るこの家を売ること自体、考えられないのでしょうね。
四草さんは、本当に必要なのか、苦労しなくても出演できる場所ができることで、落語家が精進を怠ってしまうのではないか、自分で演じる場所を探す苦労を自分がすることが大切なのではないかと言います。とても冷静で全体のことも見渡し、損得にも敏感な四草さんの言葉は、説得力があります。
喜代美ちゃんは、聞かれてびっくりして、みんなが必要だと言うからそうかなと思うだけで、実はよくわからないと言います。草々さんには情けないという顔をされてしまいますが、師匠の悲願と言っても、それだけのリスクを冒す意味があるのかを、もう一度考え直す必要がある今、彼女のような素直な感想も意味があります。
草原さんは、独自に常打ち小屋を作ると、天狗芸能とライバル関係になり、以前のように干されることが考えられると言います。それに、家族を抱え生活を守るためには危ない事は出来ないと言い、早々さんにも、小草々さんが一人前になるまで面倒を見る義務があると言います。
「以前のように干されて」というくだりで、久しぶりに喜代美ちゃんの妄想劇場が始まりました。
次週予告で、草々さんと木曽山君のシーンがなんなのか、コマ送りまでして見てしまったのですが、このシーンだったんだとわかって、笑ってしまいました。草々さんが無精ひげで師匠の半纏を着て、木曽山くんが草々さんのような格好をして、おかみさん役の喜代美ちゃんは、髪型と服も昭和になっています。あのもじゃもじゃカツラは必要だった・・・?
「極端な想像すな。」と草原さんに言われてましたが、喜代美ちゃんにとっては忘れがたい時期だったんでしょうね。
常打ち小屋を作るのに、まずお金がかかるし、それを維持していくのにも、ちゃんとした採算のとれる計画が必要で、落語の修業のかたわらに出来る事ではないような気がします。
タイミングを待っているのではいつになるかわからないという草々さんの言い分もわかりますが、身の丈に合ったものを、みんなで話し合ってじっくり作り上げて行く事も必要な気がします。
だいたい、草若師匠は、何故そんなに常打ち小屋にこだわったのか・・・。寝床で菊江さんが、そのことは死んだおかみさんと師匠の2人の願いだったという話をしていて、熊五郎さんも、自分のお店を持つに至ったいきさつを話していましたが、そこのところが1番大切なので、徒然亭のみんながそれぞれ、師匠が望んでいたからということでなく、自分の事として腑に落ちないと、そんな大変な事をやって行こうという気にはなれないのではないでしょうか。
磯七さんが手紙に、東京ではいくつもの常打ち小屋があると書いていましたが、そこを見に行って、どういうやり方をしているか参考にするということもできると思います。
一方、小浜では、清海ちゃんが、秀臣さんと一緒に和田家を訪れ、製作所を継ぐために塗り箸の修行をさせてくれと正典さんに頼みに来ています。正太郎さん、秀臣さん、正典さんから、清海ちゃんへと、伝統を受け渡せる事に、正典さんを始め、和田家の人たちはとてもうれしそうです。
塗り箸修行の休憩中、糸子さんと話していて、あのペンダントを見た糸子さんが、今はもうくすんだ輝きしかないものでも、ここにいればまた輝き出すと話すと、その後、何を思ったか、清海ちゃんはペンダントに布を被せ、かなづちで割ってしまいます。
思い出のある石を、ペンダントにしてまで大切にしていたのに、それを割ってしまうとは、思い切ったことをしたものです。・・・塗り箸の中にでも入れるつもりなのでしょうか。
その頃、糸子さんからの電話を受けた喜代美ちゃんは、急いで小浜に帰ります。正典さんが、塗り箸で、内閣総理大臣賞をとったのです。和田家では宴の最中で、小次郎さんたちも駆けつけて、ついでに結婚の報告もします。ひろしの200万円は、歌わなかったので返してもらったと、小次郎さんは喜代美ちゃんに耳打ちします。
楽しい宴のさなか、糸子さんは感極まって泣き出します。家族みんなのことをいつも心配していた彼女にとって、みんなが自分の思う道を進み、生き生きとして元気に集まれたことは、口では言い表せない幸福感に満たされる瞬間だったんですね。
「ぎょうさん、笑え。」というおじいちゃんの言葉が、このとき喜代美ちゃんの耳に聞こえてきます。
これからの常打ち小屋実現のための道のりを思うと、心から笑えるところまでこぎつけるのは、相当先のような気がします。
ほんとに、どうなってしまうんでしょうね。