やると言ったものの、喜代美ちゃんは創作落語づくりにどこから取りかかったらいいのか見当がつかず、「どねしょ~。」が炸裂しています。こんな時、仕事の先輩奈津子さんは力強いアドバイザーですね。
ポイントはお母ちゃんだと教えてあげたいです。お母ちゃんとのやり取りがそのまま落語になっているんだと。こういう時って瑣末なことに囚われてなかなか肝心なことは近くにあることに気づかないものですね。尊建さんの団子三兄弟なんかが頭から離れなかったり。あまり思いつめないで気分転換したらと思いますが、それができない状況なのが気の毒です。
糸子さんも小梅さんもいない和田家では、男2人が淋しくそうめんを食べています。「塗り箸をやってみないか。手先が器用だから向いているんじゃないか。」正典さんはふと思いついたように正平くんに問いかけます。・・・今ならそれもありですね。というか継いでほしいなあと思います。お父ちゃんや先代の目指すものの厳しさを身近で見ていて、自分がそれをやろうと思ったこともないという正平君の言葉ももっともなんですが、若い人の合理的な考えが入ることで、新しい展開が望めるかもという希望がちょっと見えた気がしました。。
糸子さんが小浜に電話をかけて、もうしばらく帰れないと話していると、突然師匠が病院を抜け出して帰ってきて、何やら探し物をしています。それを帰るように説得する草々さん。彼が、師匠に対してこんな風に怒鳴ったのを初めて見ました。師匠は倒れこんでまた病院へ。病院で、「一緒に住んでいたのに何故病気に気づかなかった。」と草々さんを責める小草若さん。「気持ちはわかるが、誰のせいでもない。これからのことを考えないと。」と草原さんは間に割って入ります。
何故気づかなかったとは思うのですが、師匠は悟られないように随分気を使って隠していたので、目に見える自覚症状がないと、気づかないのも無理はないと思います。後になって、草々さんがそのことで自分を責めることのないように願うばかりです。
仏壇屋の店先では、菊江さんと磯七さんが「人の死ぬことの最大の不幸」について話しています。磯七さんは散髪屋の先代が死んだ時、肉親が死んだ悲しみとともに苦労して身に着けた技術が全て灰になってしまったと思ったそうです。中学の時からずっと草若師匠の落語を聴いてきた磯七さんにとっては、今回のことは同じようにやりきれないことなんですね。
正典さんと正平さんは糸子さんの電話の様子を心配して、徒然亭に駆けつけます。そこに奈津子さんから師匠のことを聞いた小次郎おじさんまで現れます。
和田家の人が勢ぞろいですね。誰かが困っているとすぐに駆けつける、優しい人たちです。こんな緊急事態に助け合う人は多いほど心強いです。
師匠の病室を訪れ、舞台に出る草々さんの代わりに看病を引き受ける小梅さん。目を覚ました師匠に、先代が亡くなったときのことを話します。仕事で根を詰めて倒れた夫を気遣ってあげられなかったことを、小梅さんは長い間後悔していたんですね.。
男の人には譲れないものがあるのかもしれないけれど、自分だけで背負い込まなくても、後に残るものが受け継いでくれるのだから、自分のことを大事に思ってくれる周りの者のことを考えて、自分を大事にしてほしいと、先代にかけてあげられなかった言葉を、草若さんに伝えます。
奥さんを亡くして失意の日々の後に、自らが病に倒れるとは、なんていう不幸なめぐり合わせかとため息が出ますが、自分の経験から紡ぎ出したさまざまな励ましの言葉をもらうことができて、心配する人に囲まれた草若師匠は幸せ者かもしれません。にぎやかに送り出して欲しいという師匠の願いは、ある意味かなえられたのではないでしょうか。
私事ですが、昨年胃ガンのため入院して4ヵ月で帰らぬ人となった母のことを、どうしても草若師匠と重ねて見てしまいます。周りに迷惑をかけないのがモットーで、血便が出ていることも誰にも言わずに、貧血で病院に運ばれるまで、苦しいとも疲れたとも弱音を吐かず、仕事仕事の人生でした。写真機店だったのですが、毎月新発売のカメラを自分で買って、定休日にはそれを持って撮影に出かけていました。おかみさん会でネットワークをつくり情報交換したり、もう引退してもいい歳なのに仕事一筋の人生でした。
残っている膨大な量の写真やビデオを見て、撮りためた年月を思い、でも他の人には何の意味もないことにショックを受けもしました。母の死とともに母が大切にしてきた経験や技術や思い出などが消えてなくなってしまうことが、母を失うこととともにやりきれない思いでした。
でも、草若師匠は、落語を受け継いでくれる弟子もいて、みんなが忘れずに師匠の人柄や演じた落語を思い出してくれるんだと思うと、よかったなあと心から思います。