初めて高座に上がる喜代美ちゃんは、昔芸者だったおばあちゃんが初舞台で着るようにと持ってきてくれた着物を着て、師匠の亡きおかみさんのかんざしをいただいて、兄弟子さん達に髪にさしてもらいます。
かんざしと、それを挿した喜代美ちゃんを見つめる草若師匠の表情が、印象的でした。せつないような、うれしいような、感慨深いような・・・。表情ひとつで、そういういろんな思いが去来していることを感じさせるなんてすごい表現力だと思います。一度は自暴自棄になり、弟子たちも離れていったのに、またこうして弟子たちも戻り、落語をやれて、新しい弟子の初舞台を眺めることのできる幸せ。
私は10月に母を胃ガンで亡くしたのですが、とても着物の好きな人で、箪笥に着物がたくさん入っていましたし、私が結婚するときもたくさん着物を作ってくれたのですが、残念なことに着る機会もないし、着方がわからないことが悔やまれます。季節や着る場所、この年齢にはこういう色味、帯や帯締めとの合わせ方、今度教わろうと思っているうちに、二度と聞けない日が来るなんて・・・。
そんな私の目には、喜代美ちゃんがとてもうらやましく輝いて見えました。思いのこもったものを頂くって、お金を出せばなんでも手に入る今の世の中の価値観の対極にありますね。